第571号【梅雨入り前の長崎 】
沖縄・奄美地方は先週梅雨入りしました。長崎を含む九州北部地方の平年の梅雨入りは、6月5日頃。いま長崎のアジサイは、開花に向かい固いツボミがほころびはじめたところです。アジサイは、ウメやソメイヨシノなどと同じく、地方気象台などが植物の開花などで季節の移り変わりを測る「植物季節観測」の標本のひとつになっています。長崎の場合、アジサイの開花日は、梅雨入りの時期とおおむね重なるようです。 気象庁のデータをもとに、民間がつくった「アジサイの開花予想前線」というものがあります。アジサイ前線は5月中旬に沖縄地方からはじまり、九州、四国、本州と北上。最終地点の北海道北部に達するのは8月中旬になるとか。今年も、列島各地で次々に花開きながら、その涼やかな佇まいで多くの人々の目を楽しませてくれるのでしょう。 アジサイの季節を迎える前の長崎は、ビワの季節です。全国一のビワの産地を誇る長崎県。ちょうどいま、黄色い実が店頭に並び、まちなかでも、あちらこちらでたわわに実ったビワの木を見かけます。民家の庭先にはもちろん、路地裏の空き地や川のほとり、畑の脇などでは、小鳥が運んできた種が偶然育って大きくなったような木も多い。肥料を施さなくても、毎年たくさんの実をつけるビワの木に、生命力の強さを感じます。 ビワは、その実も葉も薬効があることで知られていますが、薬膳では、ビワの実は熱っぽいときの咳や喘息などを改善する食材として利用されています。また、最近ではβ—カロテンやポリフェノールなど生活習慣病の改善につながる成分が含まれていることも分かりました。旬を逃さず食べてほしい果物です。 春ジャガイモもいまが旬です。長崎県はジャガイモも全国屈指の生産地。アイユタカ、デジマ、ニシユタカなどの品種が知られています。いずれもおいしいのですが、肉質がやわらかで火が通りやすいアイユタカは、しっとりとした食感でおすすめです。ほかの品種よりビタミンCも豊富。スープやサラダなど、いろいろな料理に合います。新ジャガの季節は、通常サイズとともに、小イモも安く手に入ります。地元で「粒ジャガ」とも呼ばれる小イモは、泥だけ洗い落とし、皮ごと使います。「ポテトフライ」や「粒ジャガの油煮」(油で炒め甘めの煮汁でやわらかく煮たもの)などにしていただきます。 諏訪神社の参道の一角では、ザクロの木が鮮やかなオレンジ色の花をつけていました。「小屋入り」が近づくと咲きはじめるザクロの花。「小屋入り」とは、秋の諏訪神社の大祭、「長崎くんち」の行事のひとつで、毎年6月1日に奉納踊りを行う踊町の世話役や出演者などが諏訪神社と八坂神社で清祓いを受け、大役達成を祈願するものです。令和の時代に入り385年目を迎えた「長崎くんち」。秋の大祭に向け、いまから期待が高まります。
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