第578号【中島川のアオサギ 】
8月の豪雨、そして9月に入ってからの相次ぐ台風による被害にあわれた方々に心よりお見舞い申し上げます。1日も早い復旧・復興を祈っています。
さて、今回は、長崎市の中心部を流れる中島川のアオサギの話です。中島川は、眼鏡橋をはじめとする石橋群で知られる観光スポットで、一年を通して多くの人が訪れます。ここをテリトリーとするアオサギは、観光客がそばにいてもあまり動じません。そろり、そろりと長い足を交わしてほどよい距離を保ち、観光客が立ち去ると再び川面を見つめ、採餌をはじめるのです。
アオサギ(蒼鷺)の英名は、「grey heron(灰色の鷺)」。その名の通り、体は青みがかった灰色をしています。長いくちばしと首と足を持つ大型のサギで、全長は約93㎝。両翼を広げると全長の2倍近くにまでなります。中島川では、翼を広げ低空飛行で石橋の下をくぐり抜ける姿をよく見かけます。ゆっくりとした羽ばたきで優雅に隣の石橋の方へ移っていくのです。アオサギは、ときにツルと間違えられることもあるほど整った容姿をしていますが、鳴き声を聞くと、ツルとのギャップを感じるかもしれません。ツルは「クルルー」。アオサギは「グァー、グァー」と野太い濁音で鳴きます。
中島川では常時、数羽のアオサギを確認できます。餌となる川魚の様子を伺っているのか、じっと川面を見つめて立っていることが多く、いずれも単体で行動しています。集団もしくは、つがいは見たことがありません。野鳥図鑑によると、アオサギは、採餌時は単独で動き、ひと休みするときは小グループになるそうです。ということは、中島川はあきらかに採餌のためだけの場所。寝ぐらは別の場所にあるようです。
アオサギは、2年ほどで成鳥になります。成鳥は、翼の付け根や目の上から後頭部にかけて黒い線が入り、喉には黒い斑点がはっきり出ています。後頭部の黒い線はそのまま伸びて、冠羽と呼ばれる羽毛が見られます。若鳥は体がいくぶん小さく全身が灰色、冠羽もありません。一見、成鳥と思われるものもいますが、よく見ると、冠羽が伸びる前の若鳥だったりします。観光客のそばで動じないのは、こうした若鳥のよう。人間と同じで、怖いもの知らずなのかもしれません。
アオサギの繁殖期は、春から夏にかけて。サギ山とも呼ばれるコロニー(集団繁殖地)で、樹の上にお皿のような巣を作り、卵を産みます。中島川に採餌にくるアオサギのコロニーは、どこにあるのでしょう。寺町の背後の樹林、もしくは、ひと山越えた林にあるのではないかと思っているところです。
アオサギは、昼間だけでなく、夜も餌を採ります。真冬に行われる「長崎ランタンフェスティバル」のとき、黄色いランタンが飾られた夜8時過ぎの中島川で、灯りが届かない暗い川辺にいるのを見たことがあります。寒さや暗闇にも負けず、餌を求めるアオサギ。たくましい野鳥です。
中島川では、サギの仲間のコサギやゴイサギも見かけたことがありますが、どうしたことか、コサギはここ1年近く見かけませんし、ゴイサギにいたっては、最後に確認してからすでに10年以上も経っています。ほかの採餌の場所を見つけたのか、アオサギにテリトリーを奪われてしまったのか。野鳥の専門家の意見を聞きたいものです。