第663号【令和七年弥生のあれこれ】
大雪や山火事など災害に見舞われた地域の方々に、気持ちがほころぶ春が一日も早く訪れることを祈ります。 長崎の3月は、そぼ降る雨ではじまりました。咲いたばかりの菜の花を濡らし、ひととき春のぬくもりを感じさせました。しかし、雨が止むと真冬の寒さに逆戻り。三寒四温で本格的な春は訪れるものですが、今年は寒暖の差が激しすぎる気がします。体調に気を付けて過ごしたいですね。 季節の移り変わり方がいつもとは違うなと感じることが多くなりましたね。それは、花々の開花にも影響を与えているようです。今年はじめ数輪の花を咲かせていた西山神社(長崎市西山本町)のカンザクラ。地元では、旧暦の正月頃に咲くことから「元旦桜」の異名で知られています。今年は長引く寒さで開花が進まず、ひと月遅れの3月はじめに満開を迎えました。「元旦桜」の推定樹齢は126年といわれ、南方系起源の桜として貴重なものだそう。花の表情や色合いにそんなルーツが感じられました。 西山神社では、拝殿の脇に植えられた梅も満開を迎えていました。よく見ると、1本の木から紅白の花が咲いています。こうした咲き方を「源平咲き」といいますが、桃や椿などでも見られることがあります。 中島川の石橋群のひとつ桃渓橋(ももたにばし)のたもとに植えられた数本の桃の木。こちらも開花は例年よりやや遅れ気味のようですが、つぼみはいまにも開きそうでした。和暦を見るとちょうどいまが、七十二候の「桃始笑(ももはじめてさく)」の時期です。それにしても、「咲」を「笑」と表現した昔の人の感性がうらやましい。人の暮らしが自然とともにあったことが伝わってくるようです。 桃渓橋界隈を歩いていると、ハクセキレイ、セグロセキレイ、そしてキセキレイと、続けざまにセキレイの仲間を見かけました。少しあたたかくなると餌を求めて活発に飛び回るのです。ちなみにハクセキレイとセグロハクセキレイは遠目には見分けがつきにくいのですが、目の下から胸元まで黒いのがセグロセキレイです。 春めく動きを見せるのは野鳥たちだけではありません。店頭には旬の食材があれこれ登場しています。鮮魚コーナーの一角では地元産の生ワカメが「新物」の札をかかげていました。塩蔵や乾物で一年を通して常備されるワカメですが、旬(収穫期)は3月から。葉体のやわらかな口当たりと茎部分のコリコリ感は春を告げるおいしさです。 汁物、和え物、サラダなどいろいろ使えるワカメですが、ほかにも意外な食べ方があります。それは、サンドイッチです。作り方は簡単。食パンにマヨネーズを塗り、ワカメをはさむだけ。あっさりとして食べやすい軽食の出来上がりです。ちなみに明日、3月13日は「サンドイッチの日」。旬のワカメでサンドイッチを作ってみませんか。
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