第666号【小屋入りからはじまる長崎の6月】
6月1日は「小屋入り」。この日、快晴の朝を迎えた長崎のまちでは、シャギリの音色が響き渡りました。「小屋入り」とは、諏訪神社の秋の大祭「長崎くんち」の稽古始めを告げる行事です。演し物を奉納する踊町(おどりちょう)の出演者とその関係者らが、正装してまちを練り歩き、諏訪神社と八坂神社に参拝。大役の無事達成を祈願し、清祓いを受けました。その後、「打ち込み」と呼ばれる挨拶まわりへ。その様子を沿道で見守った長崎っ子たちは、秋の本番に向けて胸を躍らせたのでした。 今年の踊町(おどりちょう)は6カ町。演し物は、西古川町(櫓太鼓・本踊)、新大工町(詩舞、曳壇尻)、諏訪町(龍踊)、榎津町(川船)、賑町(大漁万祝恵美須船)、新橋町(本踊、阿蘭陀万歳)。まちの個性が光る傘鉾もそれぞれ奉納されます。これから夏場の稽古を乗り越えて披露される絢爛豪華な演し物の数々。多くのくんちファンが、踊町の方々の健康と無事達成を祈っているに違いありません。 6月8日、長崎を含む九州北部地方が梅雨入り。街角に咲くアジサイが、行き交う人々の目を和ませています。 雨の季節を代表する花、アジサイは、春のソメイヨシノのように、季節の遅れや進みなど、気象状況の変化を捉えることを目的とした「生物季節観測」の対象植物のひとつです。長崎地方気象台のホームページに、6種目9現象の「生物季節観測値」のデータが掲載されています。 今年、長崎地方気象台が発表したアジサイの開花日は、6月6日。その翌日、南山手にある長崎地方気象台へ足を運び、アジサイの標本木を見てきました。細い枝が伸び放題で、観賞用とはまた違う佇まい。きれいな淡いブルーの花を付けていました。ところで、アジサイは、花びらのように見える部分は、実はガク片だということは、広く知られています。ガク片とは別に、小さく密集しているのが本当の花(真花)です。その小さなツボミが2〜3輪開くと、開花の発表となるそうです。 気象台へ向かう道すがら、同じ南山手にあるグラバー園に寄ってみました。園内の緑はみずみずしい初夏の装い。そのたもとでアジサイが涼しげな表情を見せていました。旧グラバー住宅の前から港を見渡すと、ちょうど大型クルーズ客船「ドリーム」(77,499トン)が長崎港を離れるところでした。 7万トンクラスのこの船でも、その巨大さに圧倒されますが、長崎港には、「クイーン・エリザベス」(90,901トン)や「ダイヤモンド・プリンセス」(115,906トン)、「スペクトラム オブ ザ シーズ」(169,379トン)など、さらに大きな客船も度々入港しています。 ずいぶん前のことになりますが、大型クルーズ客船を停泊していた岸壁から見送った際、巨大な船体に驚いて「女神大橋(長崎港の出入り口に架かる橋)に、船の煙突がぶつかるのでは?」と心配したら、「大きい船は、潮位が低くなる時間帯に出入するから、大丈夫なのよ」と、知人が教えてくれました。何気ない会話でしたが船の姿とともに記憶に残っているのでした。
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