第662号【ランタンフェスティバルと冬の野鳥】
2月に入ってまもなく、列島に居座った今シーズン最強の寒波。雪に慣れた北国の人々も困惑するほどの雪量が引き起こしたさまざまな被害に心がいたみます。復旧が無事にすすみ平穏な日常がいち早く訪れることを祈っています。一方、九州・長崎では、積雪は数センチほどでしたが、身体に堪える冷え込みが続きました。交通面では、長崎市街地の平地を走る路面電車は運行しましたが、一部の道路で路面の凍結による通行止めがあり、通勤や通学、物流などへの影響がありました。また、強い冷え込みが長引いたことで、開催中だった「長崎ランタンフェスティバル」の来場者数も減少するなど、各分野に影響を及ぼしました。 今回の大寒波が訪れる直前の、2月2日(立春の前日)は節分でした。この日の午後は嵐の前の静けさのような穏やかな天候で、夕刻になると人々は役目を終えた正月飾りを携え、神社の鬼火焚きへと足を運んでいました。また、この日は「長崎ランタンフェスティバル」(1/29〜2/12迄開催)の期間中最初の日曜日ということもあり、鬼火焚きのあとランタンに彩られた街なかへ繰り出す人も多かったようです。 「新地中華街・湊公園」へ行ってみると、たいへんな混雑ぶり。毎年のことながら、極彩色の装飾が見事でした。中国の伝説や歴史上の人物をモチーフにしたランタンオブジェは、どれも表情やポーズがほほえましい。地元の人や国内外からの観光客が大勢入り混じるなか、お互いに譲り合いながら、お気に入りのオブジェの前で記念撮影。ランタンの幻想的な灯りのもと、和やかな時間が流れていました。 黄色いランタンが飾られた中島川では、水面が黄金色に輝いてとてもきれいでした。すれ違う人々から聴こえてくるのは、いろいろな言語。その意味はわからなくても、弾んだ声から楽しんでいるのが伝わってきました。見上げると、夜空には細い月と金星。長崎の冬の平和で美しいひとときでした。 今回の大寒波が終わりに近づいた頃、中島川の野鳥の様子を観にいくと、冬鳥のコガモが川面で身を縮めるようにして休んでいました。ハクセキレイやイソヒヨドリは、あたたかな羽毛のコートに身を包み、かわいらしい冬姿に。雪が散らつくなかでしたが、野鳥たちは防寒対策をしっかりして活動していました。 この日は幸運なことに、川べりで餌を探しているウグイスや、野鳥のなかでアイドル級にかわいいと評判のジョウビタキ(メス)にも遭遇しました。春の風物詩であるウグイスの「ホーホケキョ」というさえずり。これは、冬が終わり繁殖期を迎えた雄が、雌を自分の縄張りに呼ぶときの鳴き声だそう。秋・冬は「チャッ、チャッ」と小さく地鳴き。枯れ草の下の虫や種を食べて寒い季節を乗り越えます。 ジョウビタキは川石の上を、ちょこん、ちょこんと飛び跳ねながら餌を求めて移動していました。この鳥は、毎年、秋になると大陸から渡ってくるのですが、その小さな身体で、どうやって大海原を超えるのでしょうね。小さな野鳥たちのたくましい姿に、はげまされた冬のひとときでした。
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