第676号【諫早公園のつつじと本明川のオオバン】

 4月はじめに満開となった長崎の桜は、ただいま葉桜へ移行中。桜が散ってしまうのは寂しいですが、新緑の季節がはじまり、いろいろな花が次々にシーズンを迎える喜びが待っています。散ったばかりの桜の花びらが地面を覆う諫早公園では、つつじが見頃を迎えました。



 

 諫早市の中心部に位置する諫早公園(諫早市高城町)。公園のシンボル、諫早眼鏡橋(国指定重要文化財)のたもとには色とりどりのつつじが咲いていました。公園のつつじは、大正時代に地元の有志によって植栽されたもので、現在、約3万本もあるとか。この日は「諫早つつじ祭り」の開催日で、会場となる諫早公園では、野点や出店などの準備が整えられ、朝から多くの人々が訪れていました。



 

 諫早公園は、戦国時代の領主が築いた山城があった丘稜(周囲約1km、標高約50m)一帯を整備してつくられました。自然林に覆われた丘稜は、「諫早市城山暖地性樹叢(いさはやししろやまだんちせいじゅそう)」として国の天然記念物になっています。丘の頂きまで続く石段を登りきると、樹齢600年以上の大クスが青葉を茂らせていました。この大クスの根元付近には、貴重な植物というヒゼンマユミの樹が生えていました。その場に居合わせた地元の女性が、「兄の大クスが、妹のヒゼンマユミを守っているみたいに見えるでしょ」。晩秋に付けるというヒゼンマユミの黄褐色の実が小枝に残されていました。






 今回、諫早公園へは諫早駅近くを流れる本明川に出て、川沿いに設けられた歩道を歩いて向かいました。途中、コガモ、マガモ、シラサギなど、水鳥を中心に10種類ほどの野鳥を確認。その中に、先月、長崎港で見かけた渡り鳥のカンムリカイツブリもいました。カンムリカイツブリは、春になっても渡らず、留鳥になる個体もいるそうなので、本明川に棲み着いているのかもしれません。






 うれしかったのは、「幸せを運ぶ黒い鳥」と呼ばれるオオバンを見かけたことです。長崎市内ではまだ確認したことがありません。オオバンは、全体が黒い羽毛に覆われ、くちばしと額だけが白い。たいへん温厚な性格で、自分が採って来た餌をほかの鳥に横取りされても怒ったり、争ったりしないとか。再び潜水して自分の分の餌を採りに行くそうです。そんな平和的な行動が、「幸せを運ぶ」と言われる由縁のようです。


 

 実際、そうした性格が垣間見える場面に遭遇しました。小魚の群れが近づきシラサギとカワウが競うように餌を採りはじめたとき、近くにいたオオバンは、餌採りに加わらず、そっと離れていきました。また、川面をスイスイと移動中、カンムリカイツブリが進路をふさぐようにやって来ると、道をゆずり、後ろからゆっくり進んでいました。オオバンの行動は、いろいろな生き物が同じ川で共存するために、競わず、ゆずり合うことが大切だと知っているかのようです。人間界にもオオバンみたいな人が増えるといいですね。



検索