第657号【9月 酷暑の中、秋の気配】

 9月に入ってからも30℃越えの気温が続く九州。長崎ではたびたび熱中症警戒アラートも発表されています。中島川沿いのヤナギの葉はパサパサ。アオサギやシロサギは川面に影がさす夕方になるのを待って、餌取りをしているようでした。異常気象といえるほどの厳しい暑さはまだ続くようですが、ときおり吹き抜ける風に秋の気配が感じられるようになりました。もうしばらく、がまんです。





 

 旬のものを食べて、酷暑に耐え続ける身体を癒したい。そんな気持ちでスーパーの鮮魚コーナーをのぞくと、カマスが目に入りました。長崎ではカマスは9月から11月が旬とされる魚です。白身が水っぽいので、干物を好む方も多いようですが、シンプルに塩焼きもおいしい。焼く前に塩をふって30分ほど冷蔵庫におき、水分を抜けば身が締まります。白身はやわらかく、ほどよい旨味があり、ご飯がすすみます。



 

 地元の農作物を扱うお店に行くと、雲仙産の落花生を見つけました。落花生といえば、日本の生産量の約7〜8割を占める千葉県産が有名ですが、長崎県でも、雲仙、大村、五島などで生産されています。落花生の収穫時期は9月。生のままの落花生が店頭に出る期間は限られているので、見かけたらすぐに購入し、塩ゆでに。炒りタイプにはないおいしさを楽しめます。





 

 ちなみに落花生は、「ピーナッツ」、「南京豆(なんきんまめ)」、「唐人豆(とうじんまめ)」などとも呼ばれます。「ピーナッツ」の名称は昭和に入ってからだそうです。また、長崎では「落花生」を「ドウハッセン」と呼ぶことがあります。中国語で落花生が、「ロウフゥアシェン」と発音することに由来するそうです。

 

 長崎県のほぼ中央に位置する大村では、「塩ゆでピーナツ」が名物のひとつです。この地域の郷土料理で「煮ごみ」というものがあります。これは、ダイコン、ニンジン、ゴボウ、鶏モモ肉、厚あげ、干し椎茸などをさいの目に切って煮しめた、いわゆる五目煮です。大豆に代えて、ゆで落花生使うところが特徴です。



 

 9月に入り、サツマイモの収穫もはじまったようです。「新サツマ芋」と値札に記されたものを購入。さっそく、長崎市野母崎地区に伝わる郷土料理、「いも寄せ」を作りました。もっちりとした生地は、炒りゴマとショウガが香る昔ながらの味わいです。





 

 さて、来週917日(旧暦815日)は、十五夜です。一年でもっとも美しいとされる「中秋の名月」ですが、サトイモやサツマイモの収穫時期と重なることから「いも名月」とも呼ばれています。農家では、稲穂に見立てたススキを飾り、初掘りしたサトイモの煮付けや月見団子などを供え、秋の実りに感謝しました。今年の十五夜は、酷暑の中、育ってくれた農作物とがんばった人々を思い、ひときわ感慨深い月見になりそうです。



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