第624号【2021年 師走の長崎】
あっという間に12月がやってきました。11月は小春日和の日が多かったのですが、さすがに12月に入ってからは冬らしい寒さを感じるように。それでも、この時期にしては、比較的過ごしやすい天候が続いている長崎です。街路樹のナンキンハゼは、紅葉した葉を落とし、枝先につけた白い実をスズメたちがついばんでいました。ちなみにスズメが食べているのは、外側の白い皮だけ。中に入っている黒い種には毒があるそうです。
中国原産のナンキンハゼは、一説には江戸時代に長崎に伝わり、その後、日本各地に広まったといわれています。そんなご縁から「長崎市の木」に指定され、街路樹としておおいに利用されています。ナンキンハゼほどではありませんが、長崎のまちでは、ビワの木もあちらこちらで見かけます。初夏においしく熟す橙色の実が知られていますが、その実のもとになる花は、約半年前のこの時期に咲くのです。白い小花をたくさん付けますが、あまり目立たず、足を止める人は少ないよう。鼻を近づけると、甘い匂いがします。
新型コロナの感染者数が減ったこともあり、長崎では、先月から修学旅行生の姿が目立つようになりました。12月に入ったいまも、見慣れない学生服の子たちが路面電車で観光スポットを行き交っています。グラバー園や大浦天主堂などがある南山手も、修学旅行生たちで賑わっていました。実は、先月、その南山手から海側へ下り、「旧香港上海銀行長崎支店」前の横断歩道を渡ったところにある「長崎港松が枝国際ターミナル」付近に、人気漫画「弱虫ペダル」のキャラクターを施したマンホールが設置され、注目されています。
「週刊少年チャンピオン」に連載されている「弱虫ペダル」は、自転車競技をがんばる高校生たちを描いたスポーツ漫画。作者は長崎市出身の漫画家、渡辺航さんです。長崎市の下水道供用開始60周年を記念して、「弱虫ペダル」のキャラクターをあしらったマンホール全27点が長崎市内の観光施設や景観スポットに設置されることになり、先月、その第1弾として9点が設置されました。そのひとつが「長崎港松が枝国際ターミナル」近くにあるのです。「弱虫ペダルマンホール」は、まだ、あまり知られていないのか、気付かずに通り過ぎる修学旅行生も多いよう。見ると気分が明るくなるマンホールです。ぜひ、足元を探してほしい。残りの18点も今年度中に設置予定だそう。マンホールめぐりをしながら、市内観光を楽しんではいかがでしょう。
今年を振り返れば、長崎駅周辺の変化は大きなものがありました。新駅舎の建設をはじめ、駅の西口側には先月、国際会議や各種イベントが開催される「出島メッセ長崎」がオープン。これから新駅ビルも建設予定で、来年秋の九州新幹線西九州ルートの開業に向けてまだまだ変貌中です。現在、モダンな外観に変わった長崎駅は、戦後、長らく親しまれた三角屋根の駅舎から、2000年(平成9)に、大きな屋根付きの駅前広場のある駅舎に改築されました。当時の光景が、さまざまな出来事とともに蘇ります。旧駅舎より、少し西側(稲佐山側)へ移動した新駅舎。これから、どんなストーリーが刻まれていくのでしょう。いまから、楽しみです。
港に出ると、三菱長崎造船所の「ジャイアント・カンチレバークレーン」が対岸でいつもの姿を見せていました。1909年(明治42)に完成したこの大型クレーンは、大正、昭和、平成、そして令和と、110年余りの激動の時代をくぐりぬけながら長崎のまちを見守ってきました。近々、コロナ禍を乗り越えたまちの姿を見てくれるに違いありません。
◎本年もご愛読いただきありがとうございました。どうぞ、良い年をお迎えください。