第622号【2021年の秋 中川八幡神社】
10月初旬の長崎は、秋らしい安定した晴天続きでしたが、日中は例年よりも気温が上がり、真夏のような蒸し暑さでした。それでも、庭先のザクロの木には赤い実がなり、山あいにはセイタカアワダチソウやススキが生い茂り、夕暮れには美しい夕映えが広がるなど、秋らしい光景があちらこちらに。季節はずれの暑さも今週までのようで、週末には気温が下がるという予報が出ています。体調管理に気を付けて過ごしたいですね。
コロナ禍2年目の長崎の秋は、感染者数が減っていることもあって、まちの賑わいが少しもどってきたような印象です。しかし、新型コロナの収束時期は、まだ見通しが立っていません。秋の大祭「長崎くんち」は、昨年に続いて中止となり、各地で行われる秋祭りも規模を縮小したところが多かったようです。
中川八幡神社(長崎市中川2丁目)も、秋の大祭のときに境内で行われる伝統の「こども相撲大会」が、昨年に続いて中止になりました。中川八幡神社は、江戸時代初期に創建された神社で、武運の神様である誉田別命(ほんだわけのみこと)、生長足姫命(おきながたらしひめのみこと)、武内宿禰命(たけのうちすくねのみこと)の御三神が祀られています。境内の一角には武道場があり、剣道、空手、なぎなたなどの稽古場として地元の人々に利用されています。
宮司さんによると、かつては「中川相撲」と呼ばれるほど、相撲が盛んに行われ、佐賀や諫早、島原などからも相撲取りたちが集ったとか。昭和30年代の半ば頃までは境内に土俵が設けられていたそうです。
江戸時代の中川八幡神社は、長崎街道の出入り口付近の街道筋に立地していたこともあり、長崎から旅立つ人や長崎にやって来た人々が参拝に訪れることが多かったそう。境内には長崎奉行や京都の商人と推測される人などから寄進された石灯籠がいまも残されています。
住宅街の一角にあり、どこか庶民的な雰囲気が漂う中川八幡神社の境内。手水舎に2つ並んだ手水鉢のひとつには、色とりどりの花が水面に浮かべられていました。「参拝者が、花を見て心が清められますように。そして前途が花開きますように」という宮司さんの思いからはじめたそう。梅雨には紫陽花、冬には椿と、季節の花々が参拝者をやさしく迎えてくれます。
手水鉢の花を眺めたり、樹齢400年という御神木のクスノキを見上げたりしながら境内を散策していると、御朱印を求めて、何人もの参拝者が訪れていました。宮司さんによる猫のイラストが描かれた個性的な御朱印が喜ばれているようです。
シンと静まりかえった昨年秋と比べたら、人々が動き、賑わいがもどりつつある今年の秋。時代の大きな変わり目を象徴するように、あちらこちらで新しい建物が生まれています。立山では、旧県立長崎図書館跡地に、「県立長崎図書館郷土資料センター」が完成していました。緑豊かで閑静な立山の地になじむ落ち着いた雰囲気の外観。長崎県関係の文献・資料を揃え、提供してくれます。開館予定は、来年3月。いまからとても楽しみです。