第620号【涼を探して、盛夏の長崎】

 暑中お見舞い申し上げます。連日猛暑が続いていますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。今週はじめにやって来た台風9号、10号の進路を示した天気図に、早くも「秋雨前線」が現れました。大雨への警戒は引き続き必要ですが、猛暑のピークは過ぎようとしています。この夏は一段と暑さが厳しかっただけに、次の季節が早めにやって来そうだと思うと、ちょっと元気がでます。

 

 涼しげな景色を探して長崎のまちを歩けば、人家近くの草地では、白いユリが夏草の中で揺れていました。テッポウユリかと思いきや、それによく似た「新テッポウユリ」(テッポウユリとタカサゴユリの交配種)でした。テッポウユリの原産は日本の南西諸島から九州南部にかけて。開花時期は、6〜7月です。一方、「新テッポウユリ」の原産は台湾といわれ、開花時期は89月、テッポウユリより葉が細いのが特長的です。炎天下に咲く、清らかで美しいユリの花にしばし暑さを忘れるようでした。



 

 長崎市八幡町の住宅街の一角にある宮地嶽八幡神社(みやじだけはちまんじんじゃ)の鳥居も涼し気な姿をしています。たいへん珍しい陶器製の鳥居で、冷たげな白磁の肌に青色顔料の呉須で唐草文様が施されています。明治21年(1888)に有田でつくられたもので、国の登録有形文化財になっています。有田の陶山神社に同じ製作者による同一の鳥居がありますが、希少性の高い存在です。

 



 諏訪神社に隣接する長崎公園では、噴水が勢いよく水しぶきを上げていました。この噴水は、公園などの装飾用噴水としては、日本でもっとも古いといわれています。水しぶきのおかげで心なしかひんやり。周囲の緑とともに癒される光景でした。

 



 お隣の諏訪神社には、個性的な狛犬が各所に据えられています。その中から、水にちなんだ狛犬をピックアップすると、まずは、「高麗犬(こまいぬ)の井戸」。本殿裏手の通路にちょこんと据えられています。くわえた筒から流れる水は、江戸時代から枯れることのない清浄水として史書に記され、安産に効くと伝えられています。また、「銭洗いの狛犬」とも称され、この水でお金を洗うと倍に増えるという信仰があるそうです。

 



 諏訪神社本殿裏手の石段を登ると、蛭子神社の「河童狛犬」が迎えてくれます。どこか愛嬌のある小ぶりの狛犬で、会話でもしているかのような据えられ方です。頭のお皿に水をかけて祈願します。

 



 神前を守護する役割があるという狛犬。長崎市役所別館の裏手通りにある「出雲大社長崎分院」(長崎市桜町)では、めずらしい動物が神前を守っています。それは、白兎を背に乗せた1対のワニザメです。出雲大社の御祭神は大国主命(おおくにぬしのみこと)。神話「因幡の白兎」にちなんだものなのでしょう。ワニの表情や左右の兎の姿勢の違いに作者の遊び心が感じられます。しかし、このワニザメ、いわゆる魚類のサメではなく、爬虫類のアリゲーターのようなのです。ずっと気になっているのですが、真相はいまのところ不明です。



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