第610号【ふっくらかわいい冬の野鳥】
昨年末から「冬らしい寒さ」が続いています。先週からの強い寒波の影響で、北陸・新潟などでは記録的な大雪に。積雪による被害にあわれた方々に心よりお見舞い申し上げます。長崎でも先週末、最大15センチの積雪がありました。北国に比べたらわずかですが、なにせ雪には不慣れな土地柄です。公共交通機関は一時運転を見合わせ、観光スポットやお店は、臨時休業や営業時間を遅らせるなどの対応に追われたようです。
さて、いろいろと厳しい状況が続きますが、今年最初の当コラムでは、冬の野鳥の姿でひととき和んでいただきたいと思います。いずれも、石橋群で知られる中島川界隈で見かけるおなじみの鳥たちです。
トップバッターは、丸々とした姿がかわいらしい「ふくらスズメ」です。羽毛はもともと断熱性に富んでいますが、羽をふくらませることで空気の層を作り、より保温力を高めます。冬にしかお目にかかれないこの姿は、「寒雀」とも呼ばれ俳句などでもよく詠まれます。「寒雀酒蔵を出る糀の香」長崎ゆかりの俳人、森澄雄(1919-2010)の句です。厳寒の時期、酒の仕込みをする酒蔵の風景が蘇ります。
羽毛をふくらませているのは、スズメだけではありません。川辺で獲物をじっと探していたのはイソヒヨドリです。ふくらむと別の鳥のようにも見えます。ムクドリやメジロも寒さ対策は同じ。お腹をふくらましたフグを連想します。
積雪の日の朝、最初に出会ったのがジョウビタキでした。秋、極寒を迎える前に大陸を離れ渡ってくるだけあって、日本の冬の寒さなど、どうってことないのです。メスはとってもかわいい。オスもまあ、かわいい。オスとメスは同じ種類とは思えないほど体の色が違いますが、よく見ると、両方とも翼の同じ場所に白斑があり、尾羽がきれいな橙色をしています。
川辺でじっとしていたかと思うと、すばやく飛び立ち水面にむかってダイビングしたのはカワセミです。長いクチバシで小魚をとらえました。防水性のある羽が水をはじくのでビショビショになったりしません。
逆さになって、ナンキンハゼの実をついばんでいたのは、シジュウカラ。全国各地に生息する留鳥です。枝先にぶらさがったり、逆さの体勢で餌をとるのが得意技です。
イソシギは、中島川の上流から河口付近にかけて見かけます。トコトコと歩きながら、細くて長いクチバシで餌をついばみます。お腹の真っ白な羽毛が翼の付け根のところまでくいこんでいるのが特長です。
餌が少なくなる冬は、野鳥にとってもきびいしい季節ですが、小さいながらも、したたかに生きる姿に、ちょっぴり励まされます。
今年もみろく屋の「ちゃんぽんコラム」を、よろしくお願い申し上げます。