第608号【長崎と恐竜と野鳥】

 師走に入ってからも長崎では小春日和が続いています。そんななか、路地や家々の庭先でニホンズイセンを見かけるようになりました。シンプルな姿と甘い芳香で古くから親しまれているニホンズイセン。長崎市内では、この花の名所として「水仙の里」(野母総合運動公園)が知られています。



 

 「水仙の里」は、長崎半島先端に位置する野母崎地区にあります。冬の寒さが本格的になると、海岸そばの丘一面に約1,000万本のニホンズイセンが咲き誇り、花の香りと潮の香があたりを包みます。環境省の「かおり風景百選」にも選ばれた、心和む香りのある風景です。丘から見える軍艦島(端島)は、島内の建造物が分かるくらいの近さ。海岸にせまる長崎半島の山々は緑豊かで、耳を澄ませば、潮騒と野鳥の鳴き声だけが聞こえてきます。

 

 ところで、「水仙の里」では花が見頃を迎える頃に「のもざき水仙まつり」を行っていましたが、今年度は新型コロナウイルス感染拡大防止のため中止になりました。ただ、まつりはなくても、「水仙の里」へはいつでも訪れることができます。感染防止対策を万全にして楽しみたいものですね。

 

 今回、満開を待たず、ひと足先に「水仙の里」へ足を運びました。というのも、同敷地内で建設中の「長崎市恐竜博物館」を一目見たかったのです。この博物館は、来年10月にオープン。恐竜に特化した日本の博物館としては、「福井県立恐竜博物館」、「御船町恐竜博物館」(熊本)についで3つ目になるそうです。着々と工事が進められているいまの現場の状況は、建物の大きさが分かる程度。博物館の前には「子ども広場」も設けられ「長崎のもざき恐竜パーク」として整備されるそう。開館が待ち遠しいものです。



 

 それにしても、なぜ、長崎に「恐竜博物館」ができるの?と思う方も多いかもしれません。それもそのはず、長崎で恐竜の化石が発見されたのは、意外にも最近のことで、平成20年代に入ってから。長崎半島の西海岸などに分布する三ツ瀬層と呼ばれる約8,100万年前の白亜紀後期の地層から、大型恐竜として知られるティラノザウルス科の化石が長崎県で初めて発見されました。恐竜時代の地層である三ツ瀬層は、地表に現れているのが特徴的で、その後も同地層から別の種類の恐竜の化石が次々に発見され、研究者たちの注目を浴びました。こうしたことから、化石の発掘現場に近い野母崎地区に、「恐竜博物館」が誕生することになったようです。





 

 そもそも恐竜が誕生したのは、いまからおよそ23,000万年前のこと。それから16000万年以上も恐竜の時代は栄え続けましたが、6,550万年前に絶滅しました。ちなみに人類が誕生したのは、500万年前。恐竜が栄えた年月と比べたら、人類の歴史はまだまだ浅いのです。世界各地で化石が発見されているものの、まだまだ未解明なことが多いという恐竜の研究。この先、人の想像を遥かに超えた驚きが待っているかもしれませんね。









 

 さて、白亜紀末に絶滅したとされる恐竜ですが、一部の恐竜は鳥に進化したともいわれています。「水仙の里」の帰路、海岸の岩場でミサゴを発見。獲物を探しているのか、海上を静かに見渡していました。ほかにもイソヒヨドリ、ジョウビタキ、メジロ、ハクセキレイなども見かけました。こうした鳥たちが恐竜の子孫かもしれない思うと、生物の進化の不思議と面白さを感じるのでした。







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