第594号【やさしく、やさしく、ハートフルに】

 みなさん、元気に過ごされていますか。長崎の大型連休は晴天に恵まれました。期間中、多くの方々が外出を自粛したことで、市街地の交通量は例年の半分以下だったとか。窓から見上げた5月の空が目にしみるほど美しかったのは、その影響もあったからなのでしょう。



 

 今月はじめ、中島川の歩道で、長崎の郷土史家、越中哲也先生(98才)に偶然お会いしました。越中先生は、定期的に通っている病院の帰りとのこと。「体に電気ば通して来たとさ(笑)」と、相変わらず冗談めかしたもの言いで笑わせてくれます。杖をつきながらもワシワシと歩く姿は、いろいろな時代をくぐり抜けてきた方ならではの気概と気骨が感じられます。私たちが請えば、いつだって長崎の歴史のことをいろいろと教えてくださる、たいへんありがたい存在です。



 

 川沿いのベンチの端と端に座って、少し休憩。新型コロナの話題から長崎の疫病の歴史について話をされました。江戸時代、長崎は海外との交流の拠点ということで、腸チフスやコレラなどの疫病が侵入し大流行したことが何度かあったそう。また、昭和6年にも腸チフスが長崎市で大流行。このとき越中先生は、お母様を亡くされています。「厳しい母だったんですよ…」。多くは語りませんでしたが、当時のことはいまも鮮明に記憶されていらっしゃるようでした。長崎市に発生したこの年の腸チフスは、患者数780人。死者数478人(長崎市衛生史年表より)。地元の医科大の教授は、「長崎市が未だ嘗て経験せざる程度の激甚なるものにして…」と、その猛威を記しています。



 

 越中先生は、新型コロナに翻弄される現在の状況に、「いまは、なるだけ家でじっとしとかんばでしょうね」とおっしゃっていました。定期的に行われていたお寺での講座もしばらくはお休みで、いまは話のネタを集めていらっしゃるそう。そんな話をしていたら、目の前にアオサギがやって来ました。「おっ、鳥の来たばい」とひょいと腰をあげ、アオサギを指さす越中先生。立ち上がった勢いで、「さあ、ビールば1本買うて、早よ帰らんば」とおっしゃり、酒屋に向かって再びワシワシと歩いて行かれました。



 

 越中先生とのたわいもない会話にリフレッシュ。ひとは、ちょっとしたことで気分が和んだり、ストレスが解消されたりするものですね。そこで、みなさんの気分が少しでも和むといいなあという思いを込めて、ハートフルなハートの画像をお届けします。

 

 まずは、昨年度、市民の投票により長崎市の鳥に決定した「ハト」から。その顔をよーく見ると、クチバシの上あたりに白いハートが付いています。これは「鼻こぶ」とよばれるもので、大人のハトに見られるものだそうです。また、鹿も白いハート模様のお尻を持っています。以前、訪れた稲佐山公園の「しか牧場」で、ハートが並んで歩く姿を見て、思わず笑ってしまいした。





 

 植物では、この春、咲き終えたローズマリーが、ハート型の袋に小さな種を携えていました。極めつけ!?のハートを持っていたのは、数年前、浦上天主堂の近くで出会った茶トラ猫です。お尻を地面につけ前足を立てた姿勢で座ると、お腹の上あたりの毛がキュッとハート型に!ちなみに、猫たちのこの姿勢は、エジプトの女神の神話にちなんで、「エジプト座り」と言うそうです。





 

 まわりを丁寧に見渡せば、これまで見過ごしてきた小さなもののなかに、気分を和ませ、やさしい気持ちにしてくれるものがたくさんあるよう。さっそく、見つけてみませんか。

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