第561号【和やかに心豊かに楽しむ年末年始】
今年もあと数日。気分があわただしくなる一方で、お正月休みを楽しみにしている方も多いことでしょう。我が家でのんびり過ごしたり、帰省したり、年が明ければ家族や友人たちと初詣に出向いたり…。短い冬の休暇をみんな笑顔で過ごせたらいいですね。
この年末年始、美しいものを観て心豊かなひとときを過ごしたい、そんな方におすすめなのが長崎歴史文化博物館(長崎市立山)で開催されている「ジャパン・ビューティー」展です(平成31年1月20日迄)。「美人画」の名手として知られる上村松園(1875〜1949)、竹久夢二(1884〜1934)、伊東深水(1898〜1972)など、総出品数は130点ほどにもおよびたいへん見応えがあります。
「ジャパン・ビューティー」展は、5年前の東京会場を皮切りにいくつかの県を巡ってきた巡回展です。今回の長崎会場では、長崎出身の女性画家・栗原玉葉(くりはらぎょくよう:1883〜1922)の作品が展示され、注目を浴びています。玉葉は、日本画家として東京を拠点に活躍。「西の上村松園、東の栗原玉葉」といわしめるほどの実力を誇り、多くの門弟を集めました。しかし、39才の若さで亡くなったこともあってか、当時の名声は現代にまで十分に届くことはなく、知る人ぞ知る存在となっていました。
これまで、玉葉の作品を地元・長崎で見る機会はありましたが展示作品数が少ないのが実情でした。しかし、今回は初公開作品をはじめ関係史料など計60点ほどが展示され、玉葉の生涯も見渡せる内容になっていました。玉葉のまろやかでこまやかな描写にひそむ思いとは、どのようなものであったのでしょう。 そこには、現代の女性にも通じるものがあるかもしれません。
さて、長崎の冬のお楽しみは夜も続きます。クリスマスは過ぎましたが、長崎市街地は美しくライトアップされ、心温まる景色を楽しむことができます。おすすめのスポットのひとつが、今年7月、ユネスコの世界文化遺産に登録された「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の登録資産のひとつである「大浦天主堂」(1864年建造)です。夜になると南山手の教会前は、スマホなどで記念撮影をする観光客の姿が絶えないようでした。
大浦天主堂から長崎港へくだり港湾の景色を眺めながら歩くと長崎県美術館(長崎市出島町)があります。建物の中央を流れる運河沿いに施されたイルミネーションがとてもきれいです。ここから徒歩数分の場所には出島(国指定史跡 出島和蘭商館跡)があり、昨年11月に開通した出島表門橋が、出島橋(1890年建造)とともにライトアップされていました。出島と対岸を結ぶ出島表門橋は、往時の石橋とはまた違った現代的なスマートな外観です。今年、国内外のたくさんの人々を出島へ迎え入れ、新たな橋の歴史を刻みはじめたことを思うと感慨深いものがあります。
長崎のきらめく冬の夜を散策する際は、風邪をひかないように夕食にちゃんぽんを食べて身も心も温かくして、お出かけくださいね。今年もご愛読くださり、誠にありがとうございました。どうぞ、佳い年をお迎えください。