第560号【柑橘の香りで冬を元気に】

 北日本では積雪。九州・長崎もいっきに真冬になりました。この寒さに、ようやく師走らしさを感じた方もいらっしゃるかもしれません。長崎の諏訪神社ではこの時期、恒例の大門の大注連縄作りが氏子さんたちによって行われました。師走も半ば近くになり、あちらこちらで新年を迎える準備がはじまっています。





 

 これからますます寒さが厳しくなって、身も心も縮こまってしまいがちです。そんなとき、甘くさわやかな香りや味で、気分を明るくしたり、体調を整える助けになったりするのが柑橘類です。



 

 この時期の柑橘類といえば、やっぱり、みかん。こたつの上にみかんのある風景は、いまもほのぼのとした日本の冬の暮らしのワンシーンです。みかん(温州みかん)は、風邪を予防するビタミンCが豊富で、疲労回復に役立つクエン酸が含まれていることはよく知られていましたが、近年ではガン予防の効果があるβクリプトキサンチンが含まれていることがわかり、あらためて注目されました。温暖な気候に恵まれた長崎は、全国でも屈指のおいしいみかんの産地です。現在、「長崎みかん」のブランドで各地に出荷されています。

 

 香酸柑橘のれもんやゆず、かぼす、シークワーサーなどもいまが旬です。香酸柑橘の豊かな香りと酸味は、いろいろな料理にギュッとひと絞りするだけで、おいしさを引き立ててくれます。こちらも、ビタミンCやクエン酸が豊富で低カロリー。酸味の主成分であるクエン酸は、血流改善、美肌作用などうれしい効能も期待できます。

 

 来週1222日は冬至ですが、この日にゆず湯に入ると、「1年中、風邪をひかない」といわれます。ゆずの果肉や皮には、ビタミンCがたっぷり含まれていて、その成分がしみ出したお湯につかると乾燥肌の予防になるとか。また、香りにはリラックス効果もあり、かじかんだ心と体をやさしくほぐしてくれます。



 

 長崎には「ゆうこう」という伝統的な香酸柑橘があります。長崎市の外海地区と土井首(どいのくび)地区の限られた地域で自生樹が確認されています。姿は、ゆずに似た明るい黄色。酸味はそれよりまろやかで、香りも控えめです。以前、「ゆうこう」が自生する地域で育った方から、「子どもの頃、遊んでいてノドが乾いたら、枝からもいで果汁を飲んでいたよ」という話を聞いたことがあります。身近にあった柑橘が、「まさか、長崎にしか自生しないものだなんて思ってもみなかった」とおっしゃっていました。

 



 ザボンも旬を迎えています。長崎では庭木として植えているお宅もあって、大きな実が枝をしならせています。中国原産のザボンは、江戸時代に長崎に入港する唐船の船長が、ジャワ(インドネシア)からその種子を長崎に運んできて、西山神社(長崎市西山本町)に植えたのが最初といわれています。ザボンは酸味がやわらかく、甘さや香りも上品な感じ。厚い皮の白い部分は、砂糖で煮て「ザボン漬」にします。このさわやかな香りのする甘いお菓子は、長崎の郷土の味のひとつとして昔から親しまれています。

 



 さあ、冬の食卓にお好みの柑橘類を。皿うどんにも、れもんの果汁をたっぷり絞ってどうぞ。柑橘類のさわやかな香りとすっぱいパワーで、年末年始を元気にお過ごしください。

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