第555号【めくるめく長崎の秋の行事】
きょう9月26日は彼岸明け。連休を利用してお墓まいりに行かれた方も多いことでしょう。お彼岸のお供えものといえば、一般的にはおはぎですが、我が家では「ふくれまんじゅう」をよく作ります。薄力粉、砂糖、卵、生イーストをこねた生地に、粒あんを包んだ素朴なまんじゅうです。生地をふくらませるのに甘酒を使った「酒まんじゅう」、炭酸ソーダを用いた「ソーダまんじゅう」のときもあります。こうした手作りのまんじゅうは、いろいろなお菓子が気軽に手に入る時代になっても、根強く人々に求められる力があるよう。長崎県下の津々浦々で、郷土の味のひとつとして食べ継がれています。
郷土料理といえば、最近、ユニークな名前の料理を食べる機会がありました。長崎県の東彼地区(大村湾の北部に面した地域)に伝わる「もみじゃ」という料理です。名前の印象から変わった料理かと思いきや、実際はおふくろの味ともいえる昔ながらの酢の物でありました。キュウリ、ナス、シソの葉などの野菜を塩もみして水気を切り、あれば塩と酢でしめた小アジを加え、甘酢、または酢味噌で和えて出来上がりです。「もみじゃ」の「もみ」は、「揉む」、「じゃ」は「おかず」の意味だとか。夏の疲れが残る身体にうれしい酢の物でした。
さて、お彼岸の期間中に長崎新地中華街では、中国の三大節句のひとつ「中秋節」がはじまりました(9月24日(月)〜30日(日)迄)。「中秋の名月」の日(旧暦8月15日)にはじまる中秋節は、日本でいうお月見の行事のこと。期間中は澄んだ秋空に浮かぶお月さまを楽しめます。新地中華街では、月明かりのもと、満月を模した1000個の灯籠を眺めながら、家族や友人と和やかに歩く姿があちらこちらで見られました。
中秋節が終わり、10月に入ると間もなく秋の大祭、長崎くんち(10月7・8・9日)が行われます。この季節を待っていたかのように、ご近所の庭木のザクロはたわわに実らせました。ザクロは豊穣の象徴や子宝に恵まれるとされる吉木。「ザクロなます」は、昔から伝わる長崎くんち料理のひとつです。「庭見せ」(10月3日に行われるくんち行事のひとつ。本番で使う衣装や道具を踊町がお披露目。祝いの品などが並ぶ)ではお祝いの品のひとつとして並びます。
全7カ町となる今年の踊町(演し物)は、小川町(唐子獅子踊)・大黒町(唐人船)・椛島町(太鼓山)・出島町(阿蘭陀船)・本古川町(御座船)・紺屋町(本踊)。国内外のさまざまな文化が融合する後床絢爛の演し物は、長崎ならでは。例年にない猛暑が続いたこの夏も、各踊町は稽古にはげみました。子供から高齢の方まで、本番に向けて一丸となって汗を流す姿は、胸が熱くなる光景でした。
さあ、この秋も、多彩な催しが続く長崎。日本で育くまれた異国情緒がここにあります。何度もこの町を訪れながら、少しずつ親しんでもらえたら幸いです。