第550号【島々とつながる長崎港ターミナルビル】

 西日本各地での記録的豪雨の被害にあわれた方々に心よりお見舞い申し上げます。浸水した家屋やライフラインなどの復旧がすすみ、一日も早く元の生活にもどられることをお祈りいたします。

 

 長崎県の大雨警報が解除されたあと、眼鏡橋など複数の石橋が架かる中島川へ行ってみました。中島川は長崎市中心部を流れる川。1982年(昭和57)の長崎大水害のとき、石橋群は半壊や全壊などの大きな被害を受けました。その後、河川の拡幅工事と同時に、崩壊した石橋も再建。その際、二度と水害の被害にあわないようにと橋の両岸側に石段を設け、渡る位置を高くするなどの工夫が施された石橋もいくつかありました。そうした橋は、ふだん渡るときには石段を上がるのがおっくうに感じられるのですが、台風や大雨で中島川が濁流と化したとき、石橋にしぶきさえかけることなく流れていく様子を見ると、日頃の渡りづらさも忘れて、ほっと胸をなでおろすのでした。







 



 中島川を下流へすすむと長崎港へ出ます。その河口近くにある長崎港ターミナルビル(長崎市元船町)は高島、伊王島、五島列島などの島々と長崎市街地を結ぶ航路の拠点です。美しい海と浜辺を擁する島々は、これから観光シーズン。しかも、今年は630日に「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が世界文化遺産に決定したこともあり、その構成資産の一部(野崎島の集落跡、頭ケ島の集落、久賀島の集落、奈留島の江上集落など)を有する島々をめざす人々も増えると思われ、この夏の長崎港ターミナルビルは、例年以上に賑わうことになるのでしょう。



 

 1995年(平成7)、長崎港湾の再開発の一環で建てられた長崎港ターミナルビル。楕円形の大きな断面を持つ筒状の形やギザギザの屋根部分などいろいろな造形が合体した構造をグレーやメタリックでまとめた外観は、竣工から4半世紀近く経ったいまもモダンな印象です。建築設計者は高松伸という方で、ポストモダンを代表する建築家のひとりだそう。長崎港ターミナルのホームページで施設の概要をみると、この建物の通称は「Big Bitt(ビッグビット)」とありましたが、地元では昔からのなごりで「大波止ターミナル」と呼ぶ人が多いようです。

 

 館内に入ると、海側に設けられた広い窓から港湾の景色を一望、大きな筒状のコンクリート柱が並ぶ1階待合室、差し込む日光の加減で豊かな表情をみせる2階の天井部分など、非日常的な空間が旅気分を盛り上げてくれます。また、1階エントランスと2階の待合室の一角には、2015年(平成27)に世界遺産に登録された「明治日本の産業革命遺産」、そして、今回の「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」に関連するパネルを展示。このターミナルビルからは、「明治日本の産業革命遺産」の構成資産のひとつであるジャイアント・カンチレバークレーンが目の前に見えます。さらに、旧グラバー住宅があるグラバー園や「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産のひとつである大浦天主堂も一望できます。







 

 島々への航路を利用しなくても、長崎市内の観光がてら、散歩がてらに寄りたい長崎港ターミナルビル。ターミナル内の食事処や売店は、朝7時には開いています(夕方17時まで)。お出かけになってみませんか。

検索