第538号【睦月長崎ネイチャー歳時記】
長崎の三箇日は天候にめぐまれ、神社仏閣は初詣での人々でにぎわいました。大晦日から元旦にかけての夜空には、新年を寿ぐような丸いお月さま。神社の境内で行列をなす人々を月光がやさしく包んでいました。この日が満月かと思いきや、実際は、翌日の2日。しかも、2018年の満月のなかで、もっとも大きく見えるというスーパームーンでした。
空気が乾燥する(大気をかすませる水蒸気が少ない)冬は、月がいちだんと美しく見えます。星の観察にもおすすめの季節です。この時期、南の空に輝く「冬の大三角」が確認できたら、すぐそばに冬の星座を代表するオリオン座が見えるはず。ところで、いま環境省は大気汚染や環境保全への関心を高めてもらおうと、冬の星空観察を推進しているそうです。凍てつく夜空の星の瞬きは格別ですが、寒さが厳しい時期でもあります。しっかり防寒対策をしてお楽しみください。
寒さが極まるなか、長崎市野母崎からこころ弾む花の便りです。「のもざき水仙まつり」が1月7日からはじまっています(平成30年1月28日まで)。野母崎は長崎市中心部から南にのびた長崎半島の先端に位置する地域。水仙は、沖合に軍艦島をのぞむ小高い丘に咲き誇っていました(長崎市野母崎総合運動公園内)。
約1000万本の水仙を楽しめる「のもざき水仙まつり」。潮風が吹き抜けると、いっせいに揺れて、あたりにさわやかな香りを漂わせます。潮風とまじりあうその独特の香りは、環境省の「かおり風景100選の地」にも選ばれています。水仙の種類は、クリーム色の花弁の真ん中に黄色を配したベーシックな姿のニホンスイセン。もともとこの地区に群生していたものを地元の方が大切に手入れをし、増やしたと聞いています。
ここの水仙は、1本の茎にたくさんの花をつけるのが特長だそうで、園内のあちらこちらで数を確認してみると、6つくらいが多く、少なくて3つ、多いものだと8つの花をつけたものもありました。園内数カ所の展望台をめぐりながら、水仙の丘をゆっくりのぼりくだりすると、海側では潮騒の音が聞こえてきます。ジョウビタキ、ヤマガラ、メジロなど野鳥たちのさえずりも心地よく、年末年始のいそがしさを忘れ、ほんとうにのんびりできました。
水仙の花々の合間には、同じく開花の時期を迎えた椿もいろいろな種類が見られました。野母崎町には、もともとたくさんのヤブツバキが自生していますが、そのなかに、同町内の権現山で発見された「陽の岬(ひのみさき)」という貴重な一種があります。
権現山は、標高198メートル。日本最西南端に位置し、その展望台からは、東に天草灘、西に五島灘、南に東シナ海を一望することができます。緑豊かな山にはヤブツバキが1万数千本も自生。そのなかから、わずか1本だけ「陽の岬」の原木が見つかったそうです。小ぶりの白い花を咲かせるという「陽の岬」。今回は見る機会はありませんでしたが、椿の季節(1〜3月)のうちにあらためて野母崎町・権現山へ出かけてみようと思いました。
本年も、どうぞ、よろしくお願い申し上げます。