第524号【6月長崎ネイチャー歳時記】
6月1日、長崎くんちの始まりを告げる「小屋入り」が行われました。「小屋入り」とは、その年の踊町(おどりちょう)の世話役や出演者たちが揃って諏訪神社と八坂神社で清祓いを受け、くんちの無事達成を祈願するもの。この日から、それぞれの踊町は演し物の稽古に入るといわれています。今年の踊町は、馬町(本踊り)、東濵町(竜宮船)、八坂町(川船)、銅座町(南蛮船)築町(御座船・本踊り)の五カ町。小屋入りの様子を見ようと、早朝、諏訪神社を訪れると、参道脇ではザクロの花が咲きはじめていました。この花の果実が熟れる秋、長崎くんちは本番を迎えます。
長崎を含む九州北部地方が梅雨入りしたのは6月5日。その数日後の6月9日は満月でした。この日の満月は今年のうちで地球からの距離がもっとも遠いため、最小に見えるといわれていました。さらに月見好きの人たちの間では、「ストロベリームーン」が見られるとあって、ちょっとした話題に。「ストロベリームーン」とは、夏至の時期の満月が、地平線、水平線近くでいつもより赤みを帯びて見える現象のこと。しかし、天体の専門家たちは、この日の満月だけが特別に赤く見えるわけでないといっているとか。この日、住宅街からはさすがに地平線・水平線近くの満月はのぞめませんでしが、深夜、南の空を見上げると、満月はいつもよりかわいいサイズで、心なしかピンク色を帯びて見えたのでした。
この時期、身近な自然に目を向けると、雨と日差しをたっぷり浴びるからか、野の花はどれも元気いっぱい。そこへ、ひらひら、ちらちらと姿をあらわすのがチョウたちです。いまは、モンシロチョウより小ぶりで色彩豊かなシジミチョウ科の仲間をよく見かけます。濃いオレンジ色に黒褐色の斑紋が美しいベニシジミは特長的なので分かりやすいですが、青紫色のシジミチョウは、ヤマトシジミ、ルリシジミ、シルビアシジミなど似たような色あいと模様で判別がむずかしい。道脇の葉っぱに翅(はね)を開いてとまっていたのは、たぶん、ルリシジミ。それにしても青紫色のきれいなことといったらありません。
翅(はね)に魅力的な目玉模様を持つジャノメチョウ科の仲間たちも、小さくて目立たないけれど美しい姿をしています。目玉模様の数や茶褐色の濃淡などで種類が違ってきます。写真におさめたのは、後翅に3つの目玉模様がついているところからウラナミジャノメと思われます。けして珍しい種類ではありませんが、日本全国どこでも見られるジャノメチョウと比べ、生息地は限られてくるそうです。
かわいくて美しいチョウ。子どもの頃は平気でつかまえていたけれど、大人になってからは、触ることができなくなったという人もいるようです。チョウを追いかけていると、つかの間ですが童心に帰ることができますよ。ひらひらと目の前を横切るチョウがいたら、あとを追ってみませんか。案外めずらしいタイプのチョウかもしれません。