第517号【早春の小鳥たち】
散歩中、小鳥を見かけるとつい目で追ってしまう。聞きなれないさえずりが聞こえると、思わず立ち止まりその姿を探してしまう…。そんな方はいませんか。名前は知らなくても、小鳥ってちょっと気になる存在です。小鳥たちの魅力は、かわいらしいその姿だけではありません。寒い日も暑い日も、したたかにシンプルに生きている、そんな姿がとてもたくましい。そして、何より、身ひとつでビュンと飛べるところが、かっこいい。そんなわけで、早春のこの時期、長崎のまちなかで見かける小鳥をご紹介します。
スズメ以外の小鳥で、最近よく見かけるのはナンキンハゼの白い実やウメの花をついばんでいるメジロです。全国各地に棲息しているメジロは、一年中見かける留鳥。ご存知のように、オリーブ色の羽毛に目の周りの白が映えて、とてもきれい。メジロは群れて移動する習性があり、お互いの身体をくっつけあって枝にとまることがあるそう。その様子から、「めじろ押し」という言葉が生まれたとのことですが、メジロたちの「めじろ押し」は、まだ見たことがありません。
河原をトコトコ歩いては、長めの尾を上下に振ったりして、落ち着きがないのが、ハクセキレイとキセキレイです。遊んでいるのか、それとも縄張りから追い出しているのか、ハクセキレイがキセキレイのあとを追う様子を見かけました。2羽とも、波を描くように飛ぶのが面白い。「チュチン、チュチン」という鳴き声もよく似ています。単体で行動していますが、それぞれ微妙に羽毛の色が違うタイプを近場で見かけます。図鑑で調べたら、それは雄雌の違い。もしかしたら、つがいかもしれません。
キセキレイの頭上をヒューとまっすぐに飛び、石橋の下をくぐって河原に留まったのは、カワセミです。コバルト色の美しい羽を持ち、お腹あたりはオレンジ色をしています。小さな体ながら、くちばしがけっこう長い。これで小魚をつかまえるのです。じっと、川面を見つめる姿が印象的でした。
こちらの視線に気付かないのか、生垣の下をのんきに歩いていたのは、ジョウビタキ。秋頃に大陸方面からやってくる渡り鳥です。雄と雌は、羽毛の色合いがはっきり違いますが、どちらも翼に白い斑があり、尾羽根の外側はだいだい色をしています。やさしいベージュグレーの羽毛を持つ雌は、ひときわ愛らしい。羽毛をふくらませた姿はヒヨコみたいです。
中島川の上流に位置する鳴滝へ。シーボルトの鳴滝塾があった界隈は、山林に囲まれた静かな住宅街で、さまざまな野鳥の鳴き声が聞こえてきますが、その姿は枝や葉に隠れてなかなか見ることができません。そんな中、カサコソと落ち葉の上を歩いていたのは、シロハラです。ムクドリほどの大きさで、ツグミの仲間。図鑑には、「暗い林を好む」「地上で採餌」とあり、見かけた状況から、納得。大陸からの渡り鳥で、日本で越冬します。そして、春は旅立ちの季節。鳴滝のシロハラも、もうすぐ渡りのときと知って準備をしていたのかもしれません。