第504号【美しい長崎の眺望。稲佐山と鍋冠山】
残暑お見舞い申し上げます。日中、厳しい暑さではありますが、夜ベランダに出て虫の声を聞くと、かすかに秋の気配が感じられます。夜風に揺れる風鈴の音色に、心もからだもクールダウン。平和な夏の夜です。昨日8月9日は長崎原爆の日。71年前のこの日の夜をこの街の人々は一体どのように過ごしたのでしょう。当時を知る身内や原爆を体験した語り部の方々の話を思い出しながら想像します。普段は忘れてしまっているけれど、大きな犠牲をはらって、いまがある。原爆の日は、戦争のない普通の日々の尊さをあらためて気付かせてくれます。
炎天下、長崎のまちのあちらこちらできれいな花を咲かせているのが夾竹桃(キョウチクトウ)です。インド原産で、日本へは江戸時代に中国経由で入ってきたそうです。花は桃の花に似て、葉は竹の葉に似ているのがその名の由来だとか。排気ガスなどに強いとされ温かい地域では街路樹として利用されています。広島市では、原爆投下後いち早く花を咲かせ人々に希望を与えた花として、市花に制定されています。長崎でもあの夏の日につながる慰霊の花のひとつです。
夾竹桃の花が揺れるまちを行き交う人々。夏休みの真っ只中ということもあり、お子さん連れの観光客の姿が目立ちます。長崎の夜景スポットとして知られる稲佐山(標高333m)へひさしぶりに出かけると、ロープウェイの駅舎がリニューアルされ、すっきりした装いに。乗り場では、アジア各国の観光客が行列をつくって乗車待ちをしていました。
そろそろ日没という時刻に全面ガラス張りのかっこいいゴンドラで山頂へむかうと、展望台はすでに人でいっぱい。この時期、日本の西端にある長崎の日没は19時過ぎ(東京より30分以上も遅い)。刻一刻と変化する市街地の眺めは新たな道路や建物の光も加わって、美しさを増したようでした。
稲佐山から港をまたいだ向こうに側には、この春、リニューアルしたばかりの鍋冠山(なべかんむりやま)の展望台の電灯が見えました。鍋冠山は、グラバー園(南山手)の背後にある山で標高169m、稲佐山の半分ほどの高さです。新しい展望台は、半円形を描く広い眺望スペースが設けられています。市街地や長崎港内をより近くに見渡し、港の沖合に浮かぶ世界文化遺産の軍艦島も望むなど、稲佐山とはまた違った長崎の景色を楽しめます。ふだんは人も少なめでのんびり展望を楽しめるのですが、大型クルーズ船の入出港時は、展望台が混み合うほど大勢の人が訪れるそうです。
鍋冠山の展望台へは、長崎バスの「うみかぜ」というコミュニティバスで行くと便利(二本松団地バス停下車、徒歩約15分)です。もうひとつのルートで、グラバー園の第2ゲートから10分ほどで登れる階段もありますが、この秋くらいまで整備のための工事が入り利用できないそうです。
長崎観光のパンフレットやハガキでおなじみの景色を楽しめる稲佐山や鍋冠山。日常が美しい平和な長崎の景色を、この夏、ライブで眺めてみませんか。