第495号【長崎四福寺めぐり】

 先週末(319)、福岡でソメイヨシノが開花。いよいよ桜前線がスタートしました。今年の天気予測では、九州は見頃を迎える3月末頃までに気温が下がる日があるそう。花冷えが功を奏し、春の嵐にも見舞われず、桜を長く楽しめるといいですね。



 

 日に日に温かくなっていくと散歩に出たくなります。そこで今回は、観光もかねて唐寺めぐりを楽しんできました。足を運んだのは、「長崎四福寺」と称される興福寺(1624年創建)、福済寺(1628年創建)、崇福寺(1629年創建)、そして聖福寺(1677創建)です。初代の住職が中国僧で、江戸初期につくられた興福寺、福済寺、崇福寺は、特に「長崎三福寺」とも呼ばれています。ちなみに、聖福寺の初代は中国人と長崎人の間に生まれた鉄心という僧侶でした。



 

 まずは、長崎の桜の名所のひとつとして知られる風頭山の西側山麓へ。そこは「崇福寺通り」、「寺町通り」が続くところで、10数のお寺が並び建っています。通りの一角で出迎えてくれるのは、崇福寺の赤い山門です。三つの門があり装飾の美しさから竜宮門とも呼ばれていますが、正式には「三門」といい国指定重要文化財です。崇福寺には、国宝の「第一峰門」と「大雄宝殿」(本堂)をはじめ、いくつもの文化財を擁し、明末期の建築様式や吉祥模様など見どころ満載です。



 

 「崇福寺通り」から「寺町通り」に抜け、興福寺へ。その山門では、大きな隠元禅師のお顔が出迎えてくれます。ここは、明末の1654年、約30人の弟子を伴って日本へ渡ってきた隠元禅師が初めて入山した由緒あるお寺です。隠元禅師は、黄檗宗の開祖として知られています。「長崎三福寺」は、隠元禅師の渡来後、黄檗宗に移行。隠元禅師の影響力がいかに大きかったかが分かります。風格ある興福寺の大雄宝殿(国指定重要文化財)は、大陸的なおおらかさが感じられます。境内の一角には三江会所門(県指定有形文化財)という門があります。三江(江南、浙江、江西)は、揚子江の下流に位置する地域で、興福寺はこの地域出身の中国人の社交場でもあったそうです。



 

 寺町通りから徒歩約10分。長崎歴史文化博物館ある立山の麓へ。この界隈にはいずれも長崎駅へつながる「筑後通り」と「上町通り」があり、10近くのお寺が点在。福済寺と聖福寺は「筑後通り」にあります。

 

 長崎駅により近い福済寺は、福建省は漳州、泉州の人々によって建てられました。かつては国宝を有する建造物もあり文化財の宝庫でしたが、原爆により焼失。現在は、亀の甲羅の上にたつ大きな観音像が目を引きます。この観音像は平和のシンボルとして建てられたものです。



 

 最後は聖福寺。2014年に大雄宝殿、天王殿、山門、鐘楼の4棟が国の重要文化財に指定され話題となりました。建物の配置は、黄檗宗の大本山「萬福寺」(京都)に倣ったもの。一見、地味な印象ですが、随所に黄檗宗の建築様式が見られ、日本の寺院との違いを感じられます。



  

 それぞれの唐寺は、長崎の歴史に大きく関与しています。一つひとつ、たっぷり時間をかけてめぐるのがおすすめです。

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