第491号【冬の海の幸(寒ブリ、ナマコ、カキ)】

 「ブリ大根」がおいしい季節です。「寒ブリ」は脂が乗り、大根も寒さのおかげで甘みが増しています。食堂のお昼の日替わり定食で「ブリ大根」を食べながら、「やっぱり、長崎の魚や野菜って最高よね!」と一緒にいた知人に言うと、「いやいや、野菜はさておき、魚は北陸のほうがおいしいかも。それにね、ブリ大根といえば、富山県よ。富山湾沖で取れる寒ブリで作ると、すごくおいしいんだから」と、のたまう。知人はかつて富山県で暮らしたことがあり、北陸方面の歴史や食についても詳しい。聞けば、「ブリ大根」は富山県氷見市の代表的な郷土料理のひとつなのだそうです。



 

 知人によると、氷見市の郷土料理には「氷見うどん」といって、「五島うどん」に似た細いタイプの乾麺もあるそうです。「氷見うどん」は、江戸時代に同じ北陸の「輪島そうめん」の製法が伝わり作られるようになったらしい。「氷見うどん」と「輪島そうめん」、そして「五島うどん」は、麺を手で縒りながら竹にかけていくという製造工程が同じだそうで、その昔、海道を通じて「五島うどん」の製法が輪島に伝えられたのではないかという説もあるそうです。



 

 さて、件の「ブリ」ですが、ご存知のように出世魚。氷見では、「コズクラ」、「フクラギ」、「ガンド」、「ブリ」と成長に応じて呼び名が変わります。長崎では、「ヤズ」、「ハマチ」、「メジロ」、「ブリ」の順でしょうか。ほかにも地域によって呼び名がいろいろあるようです。また、長崎ではブリは養殖も盛んです。魚屋さんの話では、養殖ものは「ハマチ」、天然ものは「ブリ」と呼び分けているそうです。

 

 寒ブリに限らず、この季節の魚介類は寒さに鍛えられ、ひときわおいしそうに見えます。たとえば、クロ(メジナ)もこの時期は「寒グロ」と呼ばれ、脂がのりおいしくなります。そして、ナマコ。荒れた外海の影響を受ける五島産のアカナマコはコリコリとした食感。波静かな大村湾のアオナマコは少し柔らかい歯ごたえで、アカナマコとは微妙に違います。ナマコは、新陳代謝を促進し、お肌にもいいといわれるコラーゲンやコンドロイチンをはじめ、ビタミンB群・Eや、カルシウム、亜鉛などの栄養成分がバランス良く含まれています。滋養強壮にもおすすめです。







 

 また、有明海や大村湾、橘湾などでとれる養殖のカキもいまが旬で、それぞれの産地の道路沿いではカキ小屋が立ち並ぶ光景がみられます。カキは、ビタミンやミネラルが豊富。薬膳的には、体質を改善したり、免疫力を高める食材のひとつとされ、めまいや耳鳴り、不眠や空咳などにも効果があるといわれています。



 

 食いしん坊の女ふたりが、この時期の魚介類の話で盛り上がった昼飯の時間。「ブリ大根」でお腹も心も満たされると、「長崎と北陸の魚、どちらもおいしいよね」ということで話はまとまり、笑顔で食堂を後にしたのでありました。

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