第489号【長崎版・冬至の七種】
きのう12月22日(旧暦11月12日)は二十四節気のひとつ「冬至」。南瓜(かぼちゃ)や小豆粥を食べたり、柚子を浮かべたお風呂に入ったりして、季節の行事を楽しまれた方もいらっしゃることでしょう。「冬至」は、一年でいちばん昼間の時間が短い日。この日を境に、また日が長くなっていくことから「一陽来復(いちようらいふく)」とも称されます。暗いもの、衰えていたものが太陽の力で再び明るさを帯びてパワーが増し、良い方へ転じるという意味合いがあるそうです。
「冬至」の期間は、その15日後にやってくる「小寒」までで、寒気が本格的に厳しくなりはじめる頃です。今年は暖冬傾向にありますが、極端に気温が低くなる日もあり、体調をくずしやすい方、高齢の方などは、油断できません。
先日、料理教室の先生からこの時期に積極的に食べたい食材として、「冬至の七種(ななくさ)」を教えていただきました。いつの頃からか民間で伝えられてきたこの七種は、「南瓜(なんきん)」「人参(にんじん)」「蓮根(れんこん)」「金柑(きんかん)」「銀杏(ぎんなん)」「寒天(かんてん)」「饂飩(うんどん)」と、いずれも「ん」が二つ付く食材です。これには、「運」が開けるようにという願いが込められているそうで、旧年と新年にまたがる「冬至」の時節にふさわしいチョイスになっています。
「冬至の七種」のなかで長崎ゆかりのものは、ここでは「なんきん」と呼ばれる南瓜(かぼちゃ)です。天正年間に、ポルトガル人がカンボジアから長崎に伝えたのが日本での最初だといわれています。ちなみに「かぼちゃ」の名称は「カンボジア」が転じたものですが、ほかにも、「唐なす」や「ぼうぶら」と呼ぶ地域もあります。また、「寒天」も長崎ゆかりの食材です。1654年、隠元禅師が中国から長崎に渡ってきた際、もたらしたもののひとつといわれています。
ところで、「饂飩(うんどん)」ですが、これは「うどん」のこと。実は、同じ漢字で「わんたん」とも読みます。「わんたん」は、ご存知のように中国の点心料理のひとつで小麦粉を練って作った薄い生地に豚ひき肉を包んだもの。スープに入れたり、揚げたりしていただきます。
「わんたん」は、長崎ではすでに江戸時代に、唐人屋敷(現:長崎市館内町周辺)に居住した中国の人々が作っていたことから、「わんたん」が日本で最初に伝えられたのは長崎という説もあるようです。「わんたん」の具材となる豚肉は、薬膳では発熱時の無気力、から咳、便秘のときに食べると良いとされています。はからずも「わんたん」も「ん」が二つ。長崎の「冬至の七種」は「うんどん」ではなく「わんたん」の方がいいかもしれないと思いきや、名物「ちゃんぽん」だって「ん」が二つ付く縁起のいい食べ物なのです!野菜たっぷりに豚肉や魚介類も加わって、真冬の体を芯から温めてくれます。
長崎の「冬至の七種」は、「うんどん」に代えて、「わんたん」か「ちゃんぽん」ということにいたしまして、まずは、きょうのランチか晩ごはんは、明日の運が開けることを願って、ぜひ、「ちゃんぽん」をお召し上がりくださいませ。
本年もみろくやの「ちゃんぽんコラム」を読んでいただき、ありがとうございました。どうぞ、心温まるクリスマス、そして新年をお迎えください。
◎参考にした本/「ながさきことはじめ」(長崎文献社)