第481号【かんざらしとともに夏を振り返る】

 残暑お見舞い申し上げます。子どもたちの夏休みもあと数日でおわり。朝晩は風や日差しに次の季節の気配が感じられるようになりました。それでも日中はまだまだ厳しい暑さ。この夏を振り返りながら、冷たい甘味でひと息入れましょう。

 

 8月15日の長崎の精霊流しは、141000人の人出。3300隻の精霊船が見送られました(長崎県警発表)。精霊船は1人で抱えられる小さなものから、数十人で曳いていく大船までいろいろ。江戸時代の船はワラ・竹製。1メートル前後から1メートル50センチほどの大きさで、1人〜数人で担いだそうです。「チャコン、チャコン」という鉦の音と、「ドーイドーイ」という男たちの低い掛け声とともに進むのは昔と変わらないようですが、現代の精霊流しは、耳をつんざくような爆竹の音が特徴のひとつかもしれません。故人を見送る哀しみを昇華させるかのように、あちらこちらで鳴り響くのでした。



 

 精霊流しの翌々日、清水寺(長崎市鍛冶屋町)の「千日大祭」(毎年8月1718日)へ出かけました。この日にお詣りすると、千日間お詣りしたのと同様の功徳があるとか。観音さまを祀っているお寺の大切な行事のひとつで、清水寺でも江戸時代から続いています。毎年お詣りをしているという知人は、ご接待で出される「人形いも」がお目当てのひとつ。それは、細長いサツマイモを蒸したもので、とても甘くて美味しいのだとか。でも、今年の「人形いも」は早くに出てしまい、そうめんのご接待を受けることに。そうめんも「人形いも」と同じく「細く長く元気で」という意味があるそうです。「観音さまのご利益を体に入れる気持ちで食べるといいのよ」と教えていただきました。





 

 さて、この夏を振り返りながらいただいたのは、「白玉」。全国的にあると思われる昔ながらのおやつですが、島原地方では「かん(寒)ざらし」呼ばれる名物デザート。この地方の湧水を使った白玉団子とシロップは格別なのです。「かんざらし」の呼び名は、白玉粉の異名でもあり、原料のもち米を寒い季節に何度も水にさらし、すりつぶして作るところに由来しています。

 

 白玉粉は、もち米を保存するために考え出された保存食です。いつ頃から食べるようになったのかは分かりませんが、夏場のお江戸では、「冷水売り」という商売があり、水桶に白玉を浮かべ砂糖をかけて売っていたそうです。



 

 見た目も愛らしい白玉は、おうちで簡単に作れる和菓子です。白玉粉に水を加えて耳たぶのかたさにこね、小さな団子にしたものを茹でるだけ。お湯に入れてしばらくすると真っ白だった団子がややベージュを帯び、つやつやとした表情で鍋底から浮かびあがってきます。ここで2〜3分待ってからすくい、冷水に放ちます。あとは、好みの甘さのシロップをかけたり、きなこ、粒あんなどを添えていただくだけ。





 

 楽しく作れて、しかもおいしい「白玉」。子どもはもちろん、大人にとっても夏の小さな思い出になります。

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