第457号【夏におすすめの冬瓜のスープ】
大雨による河川の氾濫や土砂災害が起き、各地で心配が続いています。被害にあわれた方々には心からお見舞い申し上げます。
全国的に天候不順が続いたこの夏。長崎も雨や曇天の日が多く、まぶしい青空が広がる日がなかなかありませんでした。お盆前から秋めいた風が吹き抜けることもあり、「今年は、夏は無かったね」なんて言う人も。ただ、梅雨のような蒸し暑さが続いたせいもあって、8月も終わろうとしているこの時期、ちょっとバテ気味という人も多いようです。
そんな体におすすめの食材が、とうがん(冬瓜)です。夏の薬膳料理にも使われる食材のひとつで、体の中の余分な水分を排出させるはたらきがあり、むくみを改善します。さらに、のどの渇きを癒したり、熱中症を予防するはたらきもあるとされています。
とうがんは長崎では、「とうが」と呼ばれていて、お盆の前あたりから店頭で切り売りされているのを見かけるようになります。旬の野菜だということもありますが、長崎には8月15日に精霊流しを終えた翌日、精進落ちとして鶏肉と冬瓜を炊いたスープをいただく風習があるのです。それは、夏の疲れがでる時期にも重なり、本当に利にかなった風習なのでありました。
熱帯アジア原産のとうがんは、冬まで保存がきくことからその名がついたといわれていて、平安時代にはすでに食べられていたそうです。味も香りも淡白なので、出汁を十分に吸わせて炊くとおいしい。鶏肉との相性が良く、中国には中央の種の部分をくりぬいて鶏のスープを詰めて蒸した定番料理があります。長崎の「鶏肉と冬瓜のスープ」は、もしかしたら中国ゆかりの料理なのかもしれません。
「鶏肉と冬瓜のスープ」は材料も作り方もとてもシンプルです。角切りにした冬瓜、食べやすい大きさに切った鶏肉、キクラゲを水から煮て、具材が煮立ったら、淡口しょうしゅやコショウなどで調味し、刻んだ小ネギをチラシして出来上がりです。炊いてる途中、こまめにアクをとるのが、おいしいスープのコツです。炊いた冬瓜は口当たりもトロリとやさしく、冷やしてもおいしくいただけます。
具材のひとつ、キクラゲは「ちゃんぽん」にもかかせない食材です。豊富な食物繊維と鉄分で、貧血の改善にも役立つなど女性にうれしいはたらきがあります。鶏肉は、胃腸が弱って食欲や気力が無いときにおすすめの食材です。
「鶏肉と冬瓜のスープ」にもっとボリュームがほしければ、緑豆春雨を加えるといいでしょう。原料の緑豆は、体にこもった熱をとり、老廃物の排出を助けるはたらきがあります。
ひとの体に良い作用をもたらすといわれる旬の食材。今夜あたり、「冬瓜と鶏肉のスープ」でお試しになってみませんか。体がホッとしますよ。