第455号【夏、到来!涼を求めて轟の滝ほか】
梅雨雲におおわれ、雨に煙る長崎の風景は先週まで。いよいよ本格的な夏の到来です。さっそく涼を求めて多良岳(983m)にある轟峡(とどろききょう)へ行ってきました。多良岳は、佐賀県と長崎県の県境に連なる多良山系の中心に位置する山。自然が豊かでモミの原生林やツクシシャクナゲの群落、天然記念物のヤマネ(体長約8cmのヤマネ科の哺乳類)など希少な動植物が生息しています。
大小30余りの滝を有する轟峡は、水量豊富な清流の地としても知られ、『日本名水百選』、『日本水源の森林百選』にも認定されています。もっとも代表的な滝は高さ12メートルの「轟の滝」で、毎年夏になると多くの観光客が訪れます。清流の水しぶきと豊かな緑のおかげで、空気は冷んやりとしておいしい。平地ではすでに咲き終えたアジサイが、ちょうど満開を迎えたところでありました。
シーズンのみ開業する滝近くにある食堂では、名物のそうめん流しのほか、地元、高来町で栽培・製造される「高来そば」も最近、出されるようになったようです。「高来そば」は、香り高くコシがあるそばで、この地域の農家で食べ継がれてきたもの。そばのゆで汁とともに食べるのが昔ながらの食べ方だそうです。訪れた日は、お店は休み。そばは、次の楽しみにして轟峡をあとにしました。
観光スポットが集中する長崎市街地で涼を求めるなら、眼鏡橋がかかる中島川がいいかもしれません。清流とはいえませんが、川の水の流れは見ているだけでも涼しげで気が休まります。ところで先日、眼鏡橋を渡っていたら、近くのビルの屋上にとまっていたトンビがスーッと急降下。川面近くに落ちていたお菓子のかけらをつかんで再び舞い上がって行きました。めざといトンビに妙に感心しながら、ふと思い出したのが、「トンビがタカを生む」ということわざ。広辞苑には「平凡な親が、すぐれた子供を生むことのたとえ」とあります。
昔の人が思うほど、トンビはさえない鳥ではないと思うのですが、「トンビがタカを生む」と同じような意味で、長崎地方で使うのが、「唐墨親子(からすみおやこ)」という言葉です。三大珍味のひとつとされる長崎名物の「唐墨」は、ボラという魚の卵巣を塩漬けにして干したものです。親のボラより、子(卵巣)の方が価値が高くなるからだそうです。
江戸時代、隠元禅師が中国・福建から長崎にやってきたときに伝えたとされる「西瓜(すいか)」にも同じような意味で、「西瓜の蔓に瓜がなる」ということわざがあります。瓜の方が高価という意味なのでしょうが、西瓜は近年、薬効が見直されている食材のひとつなので、このことわざは使いづらくなるかもしれません。薬膳でいうと西瓜は、体にたまった熱、暑さを取り除く作用のある寒性の食材で、多汗、目の充血、喉の渇きや傷みなどに効果があるとされています。とにかく夏におすすめの西瓜ですが、だからと言って、食べ過ぎにはご注意を。体を冷やし過ぎて、お腹をこわしたりしますから。