第443号【春の兆し~2014長崎ランタンフェスティバル~】

 沖縄でヒカンザクラ(緋寒桜)が開花したというニュースを聞いた先週、長崎でも冬に咲くサクラがある西山神社(長崎市西山本町)へ出かけました。社務所の方によると、以前は新暦の正月に開花していたそうですが、ここ数年は遅れ気味だとか。例年、見頃を迎えるのは旧暦の正月頃。だからヒカンザクラは「元日桜」とも呼ばれるのでしょう。訪れたこの日は、56輪開いたところ。今年の満開は2月初め頃になるそうです。





 

 西山神社の帰り道、近くの松森神社(長崎市上西山町)にも寄ってみました。春先に咲くロウバイ(蝋梅)があることで知られる神社です。ちょうど満開のときを迎え、水仙にも似た甘くさわやかな香りを辺りに漂わせていました。ロウバイの名は、黄色い花びらが蝋を引いたような光沢があることや、月(ロウゲツ/旧暦12月の異称)に咲くことにちなんだものとか。毎年、開花を楽しみにしている人も多く、この日も参拝がてら花見をする人々の姿が絶えませんでした。





 

 一年でもっとも寒い時季に咲いて、春がもうすぐそこまで来ていることを教えてくれるロウバイやヒカンザクラ。それにしても毎年、旧暦でしめす時季に忠実に咲いていることに驚かされます。つくづく旧暦ってすごい暦だな思います。

 

 さて、「旧暦」、「春の兆し」といえば、「長崎ランタンフェスティバル」です。旧暦の中国のお正月・「春節」を祝う催しで、今年は131日(旧暦元旦/春節)~214日(旧暦115日/元宵節)まで開催します。まちの中心部に15千個に及ぶ中国ランタンや故事にちなんだ人物や神獣などのオブジェが飾られます。期間中は龍踊り、中国獅子舞、中国雜技などの催しで連日賑わいます。中島川の眼鏡橋付近は黄色いランタンに彩られ、新地中華街そばを流れる銅座川では、川面に映る桃色のランタンの幻想的な景色を楽しめます。






 ところで、中国では旧暦12月に入ると新年(春節)を迎える準備がボチボチはじまり、暮れも押し迫った1223日から1月15日(元宵節)までは、祭日の雰囲気に包まれるそうです。実家を離れて暮らす人々も、大晦日までに家にもどり1週間ほど正月休みをとるのが一般的なのだとか。きょう1月22日は旧暦1222日。もうすぐ、中国やアジアのいろんな地域で正月休みをとる人の大移動がはじまるはずです。

 

 ランタンフェスティバルの最終日となる元宵節は新年最初の満月の日になります。この日は、「元宵団子」と言って、家族揃ってピンポン玉くらいの大きさの団子(ユェンシャオ)を食べる風習があります。唐代からはじまった風習で、一家団欒の象徴なのだとか。数年前、ハルピン出身の中国の方に元宵団子の作り方を教わる機会がありました。それは、黒ゴマの餡をもち米粉で作った生地で包んだものでした。その方によると、元宵団子は地方によって材料や作り方に違いがあるものの、家族揃ってお団子を食べ、幸せを願う風習は、いまも中国全土で見られるそうです。  



 

 

参考にした資料や本/「日本大歳時記~冬編~」(講談社)、「中国年中行事冠婚葬祭事典」(周 国強 著/明日香出版社)

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