第441号【クリスマスよもやま話】

 クリスマスの定番アイテムといえば、セイヨウヒイラギ。冬枯れの季節に、春を連想させる深緑色の葉と真っ赤な実は、古くから魔除けとして用いられ、クリスマスカラー(緑と赤)のもとになったといわれています。ちなみにセイヨウヒイラギの英名はholly(ホーリー)。「神聖な」を意味するholyが転じたものだそうです。



 

 常緑樹のセイヨウヒイラギは、モチノキ科モチノキ属の植物です。大音寺(長崎市寺町)に、同じモチノキ属のクロガネモチがあり、やはり秋から冬にかけて小さな真っ赤な実を付けます。通常、クロガネモチは成長しても樹高10メートル程度だそうですが、大音寺のそれは15メートルを超える大木で、長崎市の天然記念物に指定されています。



 

 セイヨウヒイラギやクロガネモチ、そしてナンテン、センリョウ、マンリョウ、ピラカンサスなど、秋から冬にかけて赤い実をつける植物をよく見かけます。いずれもクリスマスやお正月の飾りに欠かせません。春や太陽の炎をイメージさせる赤い実は、やはり縁起ものとして扱われるのでしょう。









 

 なかでもナンテンは「難を転じて福となす」に語呂が通じることから縁起が良いとされ、昔から庭木として親しまれています。中国原産のナンテンは、一説には享保年間(1716-1735)に唐船が長崎に運んできたともいわれています。ナンテンの名も漢名の「南天燭(ナンテンショク)」からきたものだそうです。

 

 出島のオランダ商館の医師として17758月に来日したツュンベリー。スウェーデンの著名な博物学者であるリンネの高弟でもあったツュンベリーは、ケンペル、シーボルトと並んで出島の三賢人のひとりとして知られています。出島での任務を終えたツュンベリーは帰国後、日本のナンテンに「ナンディナ・ドミニステカ」という学名を付けて世界に紹介しました。「ナンディナ」は、ナンテンが訛ったもの。「ドミニステカ」は「家庭的」という意味があるそうです。江戸時代、日本ではどの家の庭にも植えられていたというナンテン。ツュンベリーはそのことを知っていたようです。

 

 さて、出島でのクリスマスと言えば、「冬至」です。キリスト教が禁止されていたその時代、オランダ人は「冬至」の祝いに見せかけてキリストの生誕祭を祝ったといわれています。毎年クリスマス近くにある「冬至」は、昼間の時間がもっとも短くなり、この日を境にまた日が長くなっていくという特別な日。厳しい寒さのなかに訪れる春の兆しとして、古代から祭事が行われてきました。

 

 一方、イエス・キリストの誕生日は1225日とされていますが、実際は定かではなく、古く冬至の祭事が行われていた1225日に合わせたともいわれています。そんなことを知ってか知らずか、出島のオランダ商館員たちは冬至の宴を楽しみ、さらにその約1週間後の阿蘭陀正月では、奉行所の役人や通詞などを招いて阿蘭陀式で祝宴を張ったそうです。



 

 年末年始、会食の機会が増えるのは昔も今も同じよう。食べ過ぎ、飲み過ぎに注意して健やかにお過ごしください。今年もありがとうございました。

                  Merry Christmas & a happy New Year

 

◎参考にした資料や本/「クリスマス小事典」(現代教養文庫)、「ながさきことはじめ」(長崎文献社)

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