第436号【秋の味~アケビから煮しめ料理~】

 この夏の猛暑で体重が3㎏減りましたが、早くも元にもどってしまいました。店頭に山盛り積まれた採れたての野菜やくだもの。収穫の季節ならではの彩りと喜びがあり、眺めるだけでつい頬がゆるみます。先日は小さな商店街の一角で、「アケビ」を発見。そばにいた60代の女性は、「子どもの頃の遠足で、よくとって食べてたのよ!」と懐かしそう。「アケビ」のよこに並んでいたのは、「イチジク」。いずれも山野に自生していたもののようで、小ぶりで、形も無骨。さっそく買い求め、秋の味覚を満喫しました。



 

 日に日に秋めきながらも、ときおり厳しい残暑にさらされるこの時期、バテ気味の身体にいいといわれるのが「甘酒」です。長崎では「長崎くんち」の少し前頃から、店頭でよく見かけるようになります。「昔は、どこの家でも手作りしていた」、「くんちのとき、必ずおばあちゃんが作っていた」という友人たちがいました。ビタミンB群や各種アミノ酸、ブドウ糖が含まれる「甘酒」は、いわば日本のスタミナ飲料。そのルーツは古墳時代にさかのぼるというから驚きです。滋味あふれるおいしさと豊富な栄養。日本中で、行事のたびに欠かさず飲まれてきた理由がわかります。



 

 秋祭りなどの行事の日、お赤飯や煮物、酢の物といった、いわゆるハレのメニューを一品添えて食卓を囲む家々も少なくないと思います。こうした行事食は、同じような料理でも地域ごとに味や名称などに個性があらわれます。たとえば、「煮しめ」。長崎くんちのときも、行事食のひとつに数えられます。ニンジン、ゴボウ、レンコン、タケノコ、とり肉などを少し甘めの調味で煮ます。「いり鶏」とも呼ばれる料理です。





 

 佐世保市と大村市の間に位置する東彼杵町や川棚町あたりでは、「栗つぼ」と呼ばれる煮しめ料理が、やはり秋祭りなどの行事食のひとつとして食べつがれているようです。「栗つぼ」は、長崎くんち料理の「煮しめ」と材料は似たり寄ったりですが、その名のとおり栗が入るのが特徴です。煮こむとき麦味噌を入れるので、より素朴な味わいです。「つぼ」というのは、料理を盛るお椀をつぼに見立ててそう呼ぶようになったといわれています。



 

 おなじく島原地方にもたんに「つぼ」と呼ばれる煮物があります。サトイモ、ニンジン、レンコン、ゴボウ、厚揚げ、コンニャクなどをだし汁で煮込み、仕上げにクズなどでとろみをつけたものです。ちなみに、富山に暮らしたことのある友人によると、富山のあるお寺では、コゴミと呼ばれる山菜と根菜類を煮込んだ「つぼ煮」という精進料理が受け継がれているそうです。 

 

 大村あたりでは、「煮ごみ」と呼ばれる煮しめ料理があります。祝い事や仏事など人々が集まるときは必ず作られているとか。特徴はこの地域でとれる落花生が渋皮付きのまま入ること。地元の学校給食でも出され、郷土の味として大切にされているようです。





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