第423号【長崎サクラ便り】

 3月中旬、九州地方のほとんどの地域で桜(ソメイヨシノ)が開花しました。今年は早めの開花となったところが多かったようですが、長崎も平年より8日も早い316日に開花。観測史上2番目の早さだったそうで、花見の予定を急きょ繰り上げた人もいました。この分だと4月初めの入学式は、新緑がすがすがしい葉桜が新入生を迎えることになりそうです。気象庁の発表によると、東北地方の開花日は平年より早いか平年並み。こちらはいつもの年のように、はじまったばかりの新学期を満開の桜が彩ってくれそうですね。



 

 長崎では開花直後に、春の嵐、晴天、雨天と短い周期で天候が変わり、気温も大きく上下しました。この荒れ模様に咲きかけた花が散ってしまうのではと思われましたが、心配は無用でした。中島川の枝垂桜も、春休みの校庭やご近所の庭の桜も、そして人知れず咲く山中の1本桜も、いま満開のとき迎えています。



 

 桜の開花のニュースを聞いた翌日、長崎から平戸へ小旅行。車で西彼杵半島を北上する途中、「西海橋」を通りました。日本三大急潮のひとつである伊ノ浦(針尾)瀬戸に架かる「西海橋」は、全長316メートル、海面からの高さ43メートル。1955(昭和30)年建造された頃は東洋一のアーチ橋として注目されました。



 

 そして、2006年には「新西海橋」が西海橋と並ぶように架けられました。それぞれ新旧の味わいがある両橋の姿。東京タワーと東京スカイツリーを見比べるときの感慨にも似ています。この橋のたもとは公園になっていて、毎年1千本ともいわれる桜が咲き誇ります。大きなうず潮が見られる春の大潮の時期にも重なるので、花見客も大勢訪れます。今年は325日~41日、48日~414日がうず潮の見頃だそうです。



 

 西海橋を後にして、平戸に到着。高倉健さん主演の映画「あなたへ」のロケ地となった「薄香(うすか)」という地域を訪ねました。平戸市街地から少し離れた小さな漁港のある集落です。港を囲むように木造の家々が建ち並ぶ光景は、どこか昭和を思わせる雰囲気。そのひなびた佇まいがロケ地に選ばれた理由だったとか。ちなみに「薄香」という地名は、その昔、大陸から持ち込んだ梅の木を植えたところ、花が咲き、梅の香がほのかに漂ってきたことに由来するそうです。



 

 平戸市街地にもどり、「平戸オランダ商館」へ。長崎より前にオランダとの貿易港として栄えた平戸。1641年、オランダ商館が長崎移転を命じられるまでの33年間の様子がうかがえる展示内容です。建物は、1639年に築造された日本初の洋風建築の倉庫を復元したもの。のちの出島貿易の時代とはまた違った往時が偲ばれました。



 

 平戸は、平安時代末に禅宗や製茶・喫茶を大陸から学び伝えた栄西ゆかりの地でもあります。駆け足でめぐるには、あまりにも奥深い平戸路。この日、桜の名所の亀岡公園(平戸城そば)の桜はまだ固いつぼみ。次は満開の頃にゆっくり訪れたいと思いました。

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