第420号【長崎に残る外来語(中国語)】
3月中旬のような温かい日があったかと思えば、急激に気温が下がって真冬にもどったり。春へ向かう合図、三寒四温。そんな季節のなか、長崎では旧正月を祝う「長崎ランタンフェスティバル」がはじまりました。長崎市の中心部に約1万5千個にも及ぶランタンが飾られ、まちは幻想的な雰囲気に包まれています。防寒着に身を包んで歩く人々も、赤、黄、桃色のランタンを見上げれば、思わず表情がゆるみます。中国雜技、龍踊り、胡弓演奏など、毎日のイベントも盛りだくさん。今年は2月24日(日)まで開催中です。どうぞ、お出かけください。
日本の中でとくに中国の影響を大きく受けた長崎のまち。地理的な近さもあって古くから交流があり、鎖国下の江戸時代にはオランダ船そして唐船との貿易港として栄えました。長崎に居留する中国人が増え、市中には唐寺が建設されるなど、中国文化が長崎に根付くようになります。そうしたなかで、中国の言葉がそのまま長崎の言葉となったものもありました。
たとえば、中華料理のときに使う陶製の匙、「チリレンゲ」。長崎では「トンスイ」とも呼びます。これは中国語でスープを飲むための匙を意味する「湯匙(トンスイ)」から来たものです。ちなみに「匙(サジ)」という発音も、中国語の「茶匙(サジ)」の発音がそのまま使われたものとか。また、戸口などにかける「暖簾(ノレン)」も中国語の発音がそのまま日本語になったものだそうです。
長崎の特産品「枇杷(ビワ)」も、中国語では「枇杷(ピィハァ)」と発音。これもまた外来語といえるでしょう。また、長崎では落花生のことを「ドウハッセン」ともいうのですが、これも中国語の「落花生(ロウハッセン)」から。和菓子の定番のひとつ「饅頭(マンジュウ)」は、中国語で「饅頭(マントウ)」と発音。長崎のお年寄りのなかには、いまも「マントウ」と呼ぶ人がいます。尚、「マンジュウ」というと日本では餡が入ったものをイメージしますが、中国では入っていないものをいうそうです。また「羊羹(ようかん)」も中国語の発音が日本語として定着した言葉のようです。
江戸時代、中国のいろいろなものをもたらしてくれたのが隠元禅師です。1654年、招かれて長崎最古の唐寺・興福寺へ。このとき中国から持って来たいんげん豆は、その後の飢饉時に多いに助けとなりました。そのほか、たけのこ、れんこん、すいか、普茶料理、煎茶なども持ち込み伝えています。また、現代の日本人になじみのある書体のひとつ「明朝体」(明の時代の木版印刷の文字)や原稿用紙(20字×10行)なども、隠元禅師とともに海を渡ってきたものです。
その昔に伝わった中国文化が残る長崎。「長崎ランタンフェスティバル」では、古き良き中国を感じることができるはず。新地中華街に隣接する湊公園会場では、「トンスイ」など中国の食器類を積み重ねてつくったオブジェが飾られています。興味のある方は、探してみてくださいね。