第416号【地球の不思議発見!島原半島ジオサイト】

 島原半島のジオサイトをめぐる機会がありました。島原半島は2009年、日本国内で初めて世界ジオパークに認定・登録されたところです。ジオパークとは、科学的、文化的に貴重な地質や地形を持った自然公園のこと。ジオパークのなかでとくに観察や体験ができるスポットをジオサイトといいます。火山と人々が共生する島原半島には、太古の噴火の跡や雲仙・普賢岳の噴火災害の爪あと、そして火山がもたらす温泉や湧水などの自然の恵みなど、200カ所近くのジオサイトがあるそうです。



 

 まずは、島原半島の最南端に位置する早崎半島へ。ここの海岸は、島原半島のなかでもっとも古い約430万年前の溶岩が見つかったところで、「島原半島のはじまり」といわれる場所です。早崎漁港近くに、その噴火口跡がありました。周囲には噴火によって飛んできたという青黒い玄武岩がゴロゴロと積み重なっています。目の前に広がるのは急な海流で知られる早崎瀬戸。海岸へ下りると玄武岩の溶岩に、荒波が生み出した模様が刻まれていました。



 



 玄武岩だらけの波打ち際の一角に、赤い石が混じった地層がありました。これはマグマ水蒸気爆発によって焼けた堆積物だそうで、地層の様子から、激しい噴火活動が穏やかになったことが判るのだとか。マグマの通り道だったというところもあり、地球のダイナミックな活動を肌で感じます。同時に、人間の想像をはるかに超える地球時間の壮大さに圧倒されるのでした。ところで、この海岸そばの畑は赤土でした。これは玄武岩が風化してできた土で鉄分を多く含んでいるのだとか。おいしいジャガイモ作りに適した土だそうです。



 

 早崎半島から国道を加津佐方面へ走ると、海沿いに両子岩(ふたごいわ)が見えてきます。この岩の俗称は「岸信介岩」。下唇にあたる部分が今年9月の台風で崩れ落ちてしまったそうですが、よく似ています。この岩は大昔に安山岩の土石流でできたもの。波の浸食で偶然に人面をかたどったのです。近くの海岸に下りると、色とりどりの小石が周囲を敷き詰めていました。その多くはチャート(微生物が沈んでできた岩石)とよばれる石。もともと海底にあった岩石が押し上げられたものだそうで、よく見ると緑や赤などさまざまな色合いの小石がありました。大昔、火山活動などで大きく変動した陸地。この近くの地層からは約150万年前は、島原半島付近は大陸と陸続きだったことの証しとなる脊椎動物の化石がたくさん出土しているそうです。



 

 島原半島をさらに北上して国崎半島の付け根にある漁港へ。恵比寿様が祀られたその先の海沿いの遊歩道をいくと約130万年前の噴火による輝石安山岩の土石流がたまったものだという地層がありました。この安山岩は橘湾をはさみ13km先の北東に位置する有喜(うき)という地域で見られる安山岩と同じだとか。もしかしたら橘湾がなかった頃は、ひとつの大きな火山だったかもしれないと考える学者もいます。また、橘湾沿いの海岸線を走ると、海に面して切り立ったような地形が何カ所か見られますが、これは海底火山の力が加わったことで、絶壁の先にあった地形が海に沈みこんだものと考えられています。





 

 島原半島のジオサイトは、ほかにも平成新山、島原の湧水、小浜温泉、雲仙温泉、そして唐子の湿地帯など見どころは尽きません。太古の地球に触れると、自然の偉大さ、ありがたさを感じずにはいられません。ぜひ、お出かけください。

  

◎参考にした本/長崎游学マップ7~島原半島ジオパークをひと筆書きで一周する~

















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