第411号【もうすぐ、長崎くんちです】
秋の味覚、ナシがおいしそうに店頭に並んでいます。「ナシはリンゴ酸やクエン酸を含み、疲労回復に役立つのよ。夏の疲れが出るこの時期に食べるのは、理にかなったことなの」と教えてくれたのは、料理教室の先生。旬の食材って、本当にありがたいものですね。
9月も終盤に入り、日に日に秋めくなか、日本は祭りのシーズンに突入。長崎も諏訪神社の大祭「長崎くんち」が10月7、8、9日に行われます。地元の60代、70代の方々に子どもの頃の「長崎くんち」についてうかがうと、当日は晴れ着や新しく買った洋服を着せられ、食卓には、ざくろなます、お煮染めが並んだとか。また、甘酒も専用のカメに必ず作ったそうです。
そんな「長崎くんち」の家庭料理には、「さらさ汁」というものもあります。豆腐、ちくわ、板付けかまぼこを具材とした白みそ仕立ての汁碗です。料理名は、江戸時代に輸入されていた文様柄の木綿布、「更紗」に由来するそうですが、なぜこの料理の名に転じたのか、詳しくはわかりませんでした。
さて、寛永11年(1634)にはじまった「長崎くんち」。奉納する演し物を担当する町は「踊り町」と呼ばれ、7年に1回その当番が巡ってきます。それぞれの町内で趣向を凝らした演し物は、各町の歴史を物語り、東洋と西洋が混在する長崎の歴史絵巻にふれるような魅力があります。
今年の「踊り町」は5カ町。町名(演し物)は次のとおりです。今博多町(本踊り)、魚の町(川船)、玉園町(獅子踊り)、江戸町(オランダ船)、籠町(龍踊り)。
今博多町の「本踊り」では、6羽の鶴に扮した踊り子たちが優雅に舞います。町内の小さな子どもたちも踊りに参加。本番に向け、夜、ゆかた姿で一生懸命稽古に励んでいました。
眼鏡橋がかかる中島川沿いに位置する魚の町。昔、魚市があったことに由来する町名です。奉納する演し物「川船」では、屈強な根引き衆による船回しが見どころのひとつ。また、子どもが扮した船頭による「網打ち」にも注目です。
玉園町の「獅子踊り」は、日本の獅子舞とはまた違った風貌の獅子が登場。江戸町の「オランダ船」は、鮮やかなブルーの船体が目を引きます。西洋楽器によるリズム(囃子)がいかにも長崎らしい。そして、籠町の「龍踊り」。辰年でもある今年、熟練の龍衆らによる迫力いっぱいの演技が今から楽しみです。
長崎くんちは、10月7、8、9日がメインイベントですが、実は10月3日の庭見世(にわみせ)も大事なくんち行事のひとつです。この日、夕方から夜10時くらいまで、それぞれの踊り町で本番に使う衣装や道具、お祝いの品々を披露します。長崎っ子たちは家族や友人、職場の仲間たちと踊り町を渡り歩きながら、くんち話に花を咲かせるのでした。