第395号【2012長崎ランタンフェスティバル】
ふくふくと極彩色のぬくもりがまち中を包んでいます。旧正月を祝う「長崎ランタンフェスティバル」がはじまりました。今年は1月23日(月)から2月6(月)までの15日間開催されます。この期間は、中国で「春節(しゅんせつ)」と呼ばれる旧暦1月1日から、元宵節(げんしょうせつ)の1月15日にあたり、中国では大勢の人が正月休みで故郷へ帰省し、新年を祝います。
ランタン(中国提灯)の幻想的な明かりに導かれて歩く冬の長崎。いにしえの中国の偉人や霊獣たちのオブジェが行き先々で出迎えてくれます。何だか中国絵巻の中に迷い込んだような気分に。古くから中国とのゆかりの深い長崎の歴史をあらためて実感します。
毎年、開催前から話題になるのが湊公園(新地中華街となり)に設置される干支の巨大オブジェ(高さ約8メートル)です。今年は3体の龍が「珠(たま)」と戯れる姿がダイナミックに表現されています。平和や希望を象徴するという龍。東日本大震災の復興への願いが込められています。
「長崎ランタンフェスティバル」の舞台となる長崎市中心部には、新地中華街会場、中央公園会場、唐人屋敷会場など複数の会場が設けられ、連日夕刻からさまざまな催しが繰り広げられています。昨年から会場のひとつとなった孔子廟では、中国の古い建築様式を堪能できます。孔子廟を訪れたら、ぜひ隣接する中国歴代博物館へも足を運んでみてください。日本ではここでしか見る事ができない貴重な史料の数々が展示されています。
龍踊り、中国獅子舞、中国雑技、二胡の演奏、太極拳など中国色豊かな催しを楽しめる「長崎ランタンフェスティバル」。特にステージを設けた新地中華街会場と中央公園会場には大勢の観客が集まり、真冬の夜とは思えない熱気に包まれています。また、今年から新地中華街の北側の入り口付近を流れる銅座川一帯には桃色のランタンが飾られています。黄色いランタンで彩られる中島川とはまた違った新しい景色です。
中国ゆかりのこのお祭りで毎年感じるのは、人々の幸せを求める思いの強さです。龍や麒麟などの聖獣をはじめ縁結びの神様「月下老人」や民間信仰の「福の神」などのオブジェ、文字を逆さに飾ることで幸せを呼ぶという「逆さ福」、幸福を願って食べる「元宵団子」など、飾るもの、口にするもののあれこれが幸福につながる縁起を担いでいます。ほほえましく、いじらしささえ感じるそうしたものに、どんなときも希望を失わずに生きようとする人間の底力、たくましさを感じて、元気が出ます。
「長崎ランタンフェスティバル」の舞台は、江戸時代に出島や新地周辺に築かれた「長崎」のまちだったところと重なります。当時もいまも、オランダとの貿易以上に、中国との貿易が長崎の人々の暮らしに多大な影響を及ぼしたことをあらためて感じるのでした。