第393号【長崎の願掛けスポット】

 きょうは仕事納め。「来年はいい年になりますように」と願いながら職場や家の大掃除にいそしんでいる方も多いことでしょう。一年をふりかえれば、いろいろな思いがこみあげてきます。こうして無事に過ごしていることへの感謝と新しい年への希望。そんな思いを胸に願掛けスポットを巡りました。

 

 シーボルトの鳴滝塾跡のある地域には「高林寺」という小さなお寺があります。ここには長崎でもっとも古いといわれるお地蔵さまが祀られています。観音さまのような優しい表情をしたこのお地蔵さまは、衣が赤く塗られているので「赤地蔵」とも呼ばれています。この赤色は祈願して病気が治ると塗られるそうで、お地蔵さまのパワーが発揮された証しなのでした。



 

 ところで、「高林寺」の入り口付近にはかつて煉瓦造りアーチ型の山門がありました。明治時代のものだったそうですが、いまはその一部と思われる跡があるのみ。使われた煉瓦は長崎で俗に「こんにゃく煉瓦」と呼ばれたタイプのようです。 「こんにゃく煉瓦」は、幕末の安政年間にオランダ人技師ハルデスの指導のもと長崎で焼かれたのがはじまりで、それが日本の一般の建築物に使う赤煉瓦の最初といわれています。4センチほどの薄さが特長で、こんにゃくの形に似ていたこことから、そう呼ばれるようになりました。



 

 煉瓦づくりアーチ型の山門は、大音寺(長崎市鍛冶屋町)の境内でも見られます。こちらは折にふれ修理・修復がなされてきたようできれいなアーチ型を残しています。長崎の郷土史の古老によると、明治時代の長崎では、煉瓦を使った門をつくるのが流行り、それ自体はけして珍しくなかったとか。しかし、時代とともに数が減っていることを思えば、当時の長崎の風物を伝える貴重なものといえるかもしれません。



 

 話を本題にもどしましょう。長崎で初詣の参拝者数がもっとも多い諏訪神社にも、さまざまな悩みをきいてくれる願掛けどころがいくつもあります。そのなかのひとつが、本殿の裏手に祀られている「トゲ抜き狛犬」です。心にトゲのように突き刺さっていることがある方は、この狛犬さんにお願いしてみませんか。



 

 諏訪神社から徒歩5分のところにある松森神社には、願掛けではありませんが、松竹梅の燈籠があります。胴のあたりは松の木肌、上部に竹や梅の花のデザインを組み合わせたおめでた尽くしの燈籠で、思わず手を合わせたくなります。

 

 

 神社やお寺ではありませんが、観光客を中心に多くの人々の幸せになりたい思いを受け止めたのが眼鏡橋そばの「ハートストーン」です。願掛けされた恋の数だけ、ハートストーンのパワーが増しているような気がしないでもありません。



 

 昔もいまも絆を求め、幸福を願うわたしたち。『幸福は義務である』と語ったのはフランスの哲学者アランでした(『幸福論』)。家族や友人、日々の生活を大切に、きょうも、あしたも、来年も、一歩ずつ前に進んでいきたいものです。

 

◎本年も、ご愛読いただきまして誠にありがとうございました。

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