第391号【秋の植物を見て歩く】
11月の長崎は、修学旅行シーズン。この時期の密かな楽しみは、電車や街角ですれちがう修学旅行生たちの制服です。最近の制服はデザインや色あいなど、ずいぶんお洒落になりました。制服から、校風やお国柄も伝わってくるような気がします。こんな楽しみがあるのも観光地ならではなのでしょう。
さて、木々が色づく秋は植物観察が楽しい季節でもあります。かわいいドングリを見つけたり、石垣を這う植物が絵画のように見えたりなど、何かと発見があります。修学旅行生が必ず訪れる浦上地区(原爆資料館や平和公園、永井隆記念館などがある)へ足を運ぶと、街路樹のナンキンハゼが赤や黄色に染まりはじめていました。ナンキンハゼは中国原産の落葉樹。江戸時代に長崎に渡来したといわれ、1975年に「ながさきの木」に指定されています。今年は11月に入っても温かい日が続いたせいか、紅葉が遅れ気味のようです。
「永井隆記念館」では、永井隆博士が晩年を過ごした小さな木造家屋「如己堂(にょこどう)」の脇に植えられた植物が目を引きました。長くて広さもある葉が特長の「芭蕉」です。戦後まもなく如己堂が造られましたが、それ以前から今の場所に植えられていたと聞いたことがあります。いまでは高さ3メートル近くまで成長しています。「芭蕉」は、中国原産の植物で、日本にはかなり古い時代に渡来。また、松尾芭蕉の名の由来となった植物としても知られています。秋も末頃になると「破芭蕉(やればしょう)」といって、葉が枯れて葉脈に沿って破れてくるのですが、まだ青々と繁っていました。
浦上天主堂のたもとでは、芙蓉(ふよう)が満開でした。芙蓉は、朝咲いて夕方にはしぼむ「一日花」で、この時期、毎日新しい花を咲かせます。浦上天主堂の芙蓉は1本の木に白とピンクの両方の花が咲いていました。はじめに白く咲いて、時間が経つにつれてピンク色に変わるタイプのようです。
浦上地区界隈を流れる浦上川沿いを行くと、四方に大きく枝を広げた樹木がありました。「センダン」というアジア各地に自生する落葉高木です。春には青葉、初夏にはうす紫色の小さな花をつけ、現在は小さな黄色の実をたくさん付けていました。もう少し秋が深まると葉が落ちてしまいます。季節ごとの変化がよくわかるこの木は、ご近所の方々に大切にされているようでした。
さらに上流に向かって歩いていたら、「チッツー」という鳴き声がしました。川面に目をやると、カワセミの姿が…。しかも2羽。「渓流の宝石」と異名を持つこの野鳥はご存知の通り、青緑色をした小鳥です。何だか得した気分になりながら、このあと、写真に撮ろうと再びカワセミを探したり、マガモを追いかけたりして、もうヘトヘトに。のんびり楽しむはずの散策が、いつしか足が棒になるほど歩き回ってしまい、翌日は筋肉痛でイタイ思いをしたのでした。