第387号【平成23年長崎くんち情報】
コオロギやスズムシたちの声が涼やかに響く夜。暑かった夏のことなどすっかり忘れてしまいます。そろそろ秋祭りシーズンもはじまったようで、新聞やテレビニュースなどで各地の祭りの様子が伝えられています。ここ長崎でももうすぐ370余年の伝統を持つ「長崎くんち」(国指定重要無形民俗文化財)がはじまります。
「長崎くんち」は長崎市民の総鎮守である諏訪神社の秋の大祭です。毎年10月7・8・9日の3日間にわたって多彩な演し物(奉納踊り)が繰り広げられます。演し物は、「踊り町」と呼ばれるまちの人々によって奉納されます。「踊り町」は現在全部で40数カ町(江戸時代はもっと多かった)。そのうちだいたい5~7カ町が7年に1回当番になって、それぞれのまちに伝わる演し物を披露します。
今年の「踊り町」は、紺屋町(こうやまち)、出島町(でじままち)、東古川町(ひがしふるかわまち)、小川町(こがわまち)、本古川町(もとふるかわまち)、大黒町(だいこくまち)樺島町(かばしままち)の6カ町です。本番まで1カ月を切った9月下旬ともなれば、どのまちも総仕上げの段階です。各踊り町の練習場へ足を運んでみると、本番さながらの緊張感が漂っていました。
演し物をご紹介します。紺屋町は、眼鏡橋がかかる中島川沿いにあり、江戸時代には唐船が運んで来る白糸や染料で染め物業を営む人が多かったことにちなんだ町名です。当時、同川沿いには本紺屋町、中紺屋町、今紺屋町と3つの町があり、異国風の染め物で「トウジンクウヤ」と称されるほど繁盛していたとか。現在の紺屋町は、江戸時代に隣接していた中紺屋町、今紺屋町を中心に戦後、編成されたものです。奉納される「本踊り」は、江戸時代の染め物職人の暮らしぶりを再現。見どころのひとつは、白く長い布を使った舞い。かつて中島川で行われた布さらしを表現したものだそうです。
出島町は、文字通りかつてオランダとの貿易の窓口だった出島があったことにちなんだ町名です。華やかで重厚感のある阿蘭陀船を中心に、西洋と東洋が出合うドラマチックなストーリー展開で観客を魅了します。阿蘭陀船は通常の曵き回し以外に、「オルゴール回し」と呼ばれる超スローな曵き回しが見どころのひとつです。12人もの子供たちが囃子方として乗船。シンバル、ドラム、そしてベルリラという鉄琴などを使って、無国籍風の音楽や長崎の昔歌を奏でます。はるばる海を渡ってやってくる阿蘭陀船の光景や東洋と西洋が入り交じるイメージと重なる音楽です。
東古川町の演し物は「川船」です。男衆が舟歌をうたう中、子供の船頭が網を打つシーンは、このまちならではの演出です。小川町は華やかでコミカルな動きが魅力の「唐子獅子踊り」。本古川町は豪快な曵き回しが見逃せない「御座船」、大黒町は豪華絢爛な「唐人船」、樺島町は今年唯一の担ぎもので、エネルギッシュで粋な「太鼓山(コッコデショ)」です。「長崎くんち」は、ぜひ、映像ではなく生でご覧下さい。370余年も受け継がれて来た理由と魅力がわかります。
◎参考にした資料/平成23年版の長崎くんちプログラム(通称:赤本)