第382号【夏のおいしい魚たち】
先月末、宮城県の気仙沼港で大震災後初めてカツオが水揚げされたというTVニュースがありました。例年より一カ月遅れ。待ちに待った海の幸に舌鼓を打つ人の映像に、初ガツオの香りが伝わってくるようでした。
気仙沼からぐーんと西へ離れた、ここ長崎の海でとれる旬の魚はというと、カツオはもちろん、真アジ、イサキ、タチウオ、アラカブ、カワハギなどでしょうか。魚屋さんやスーパーの鮮魚コーナーでおおいに目立っています。
豊かで美しい海に恵まれた長崎は古くから漁業が盛んな土地柄です。サバ、真アジ、イサキ、ブリ、サワラ、マダイ、トビウオ、エイなどは、全国でも屈指の漁獲量を誇ります。ブランド魚もいくつかあって、たとえばアジでは、五島灘でとれる「ごんあじ」、長崎半島の先に位置する野母崎の沿岸で釣り上げられる「野母んあじ」などが主に関東や関西方面に出荷されています。
そうしたブランド魚ではなくても、新鮮でおいしいアジがふんだんで手に入りやすいのが長崎のいいところです。特にこの時季は脂がのって美味。長崎の食卓では、焼くより、お刺身やタタキにしていただくことが多いかもしれません。また、小アジが手に入れば南蛮漬けに。これは地元のスーパーなどの惣菜コーナーでも欠かせないひと品。こんなところにさりげなく土地柄が現れます。
ところで、アジはカルシウムの含有量が海の魚の中でもトップクラスだといいます。普段の食生活に上手に取り入れていきたいものです。
イサキも、「ツユイサキ」と呼ばれるほどいまがおいしい季節です。やわらかく少しさっぱりとした白身魚で、お刺身はもちろん、煮付け、焼き魚、唐揚げなどにしていただきます。地元の漁師さんらは、「イッサキ」と、ちょっとイキな感じで呼びます。東北地方では「オクセイゴ」とも呼ばれるそうです。
カワハギも夏場が旬です。菱形をした平らな身体と口をとがらせた個性的な容姿はどこかユーモアを感じさせます。皮がすぐに剥がせるからこの名前が付いたといわれています。いまでは皮を剥いだ状態で売られることも多く、調理の手間がかかりません。弾力があり独特の香りのする白身は煮付けにするとおいしいですよね。また、カワハギの肝臓(キモ)は珍味として知られていますが、食通に言わせると、第二の旬といわれる秋~冬のキモが特におすすめだそうです。
この時季は他の季節が旬といわれるレンコダイ、マダイ、イイダコ、イトヨリ、水イカなどもたくさん店頭に並び、思いのほか魚種が豊富です。近年では全国的に漁獲量が減り、養殖ものや輸入ものも増えている魚たち。四季を通じて新鮮な魚をいろいろ味わえる長崎は本当に恵まれています。
◎ 参考にした本/「からだによく効く食べもの事典」(三浦理代/池田書店)