第379号【もちもちの新しい食感、「ロザリオ南蛮パスタ」】
手延べ素麺の産地として知られる南島原市の職人さんが、「手延べ」の技術と勘を活かしてパスタづくりにチャレンジ。3年の試行錯誤を経て、もちもちっとした新しい食感の手延べパスタ「ロザリオ南蛮パスタ」を完成させました。
「こねた生地を、引き延ばして、熟成させる。その工程を繰り返すなかで何度も手で、舌で、麺の状態を把握します。それを『麺の声を聞く』とも言うのですが、私の場合は『麺と格闘』するという感じでした」と話すのは開発者の本多祥彦(ほんだよしひこ)さん。手延べ素麺づくり40年のベテランです。
「開発前は、手延べ製法でパスタをつくるのは無理だと周りに言われたんですよ」。その理由は原材料のデュラム小麦粉にありました。この小麦粉は硬い性質の粗びき粉で、中力粉でつくる素麺とは生地の感触も延び方も全く違います。「たとえば、生地をこねたとき引きは強いのですが、延ばそうとするとブスッと切れてしまうのです」。元来、凝り性でねばり強い性格の本多さん。試行錯誤を繰り返し、デュラム小麦粉の個性を身体で憶えていきました。
このパスタは、生地を徐々にタテに延ばしながら細いひも状にしていく作業や、麺にヨリを入れながら延ばす作業など、手延べ素麺と同じ全12の製造工程でつくられます。それは、延ばしては熟成させるという作業の繰り返し。そして最後は低温で2日間かけてじっくり乾燥させて仕上げます。作業中は常に『麺の声』に耳を澄ますという本多さん。そうやって、デュラム小麦粉のうまみ、甘み、もちもち感を引き出していくのです。
ところで、「ロザリオ南蛮パスタ」のふるさと南島原市は、豊かな自然を誇る島原半島の南に位置し、肥沃な大地とミネラル豊富な水に恵まれた地域です。戦国時代にはキリシタン大名に治められ、宣教師を中心に南蛮文化が花開いた土地でもあります。天草四郎で知られる島原の乱の舞台としても知られ、いまも数々のキリスト教関連の史跡が残されています。そんなまちの歴史にちなんだ「ロザリオ南蛮パスタ」というネーミング。「地元のまちおこしにつながるパスタにしたかった」という本多さんの願いが込められています。
「手延べ素麺のように、原材料はなるだけシンプルにしました」という本多さん。厳選のデュラム小麦粉を100%使用し、島原半島のおいしい水と長崎県のきれいな海水でつくられた塩を入れてこねます。ほかには製造作業の途中で麺の表面が乾かないようにほんの少しのオリーブバージンオイルを使うだけ。パスタの黄色は、デュラム小麦粉に含まれた自然なカロテンの色です。
「ロザリオ南蛮パスタ」のゆで時間はわずか3分。パスタ自体に塩が練り込まれているので、ゆで水に塩は必要ありません。ゆで上がったら、いったん水でしめると調理しやすいようです。味は乾燥パスタでありながら、もっちりとして生パスタのようでもあります。
パスタの定番ペペロンチーノ、中華のジャージャー麺風、和風だしの冷製パスタなど和・洋・中いろいろ作ってみました。ソースや具材とからみやすく、アイデアしだいでさまざまな味わいが楽しめそうです。もっちりとした味わいの向こうに、どこか素朴な手延べ素麺の存在が見え隠れする「ロザリオ南蛮パスタ」。ぜひ、一度お試しください。
◎取材協力/本多製麺有限会社 http://www.hondaseimen.com/