第377号【稲佐山の長崎ロープウェイ】
長崎はつつじの季節に移りました。平地ではすでに満開を過ぎたところもありますが、つつじの名所でも知られる稲佐山(いなさやま:標高333メートル)での見頃は、このゴールデンウィークになりそうです。
つつじの咲き具合を確認しながら久しぶりに乗った稲佐山のロープウェイ。長崎のまちを見渡すダイナミックな景観はいつ見ても素晴らしく、ゴンドラの上昇に合わせて美しい港や、山の斜面に家々が高台までびっしりと建つ景色が広がります。
このロープウェイは、昭和34年(1959)10月に運行がはじまって以来、長崎観光に欠かせない人気スポットです。空中に張られたワイヤーロープだけを頼りに上り下りするゴンドラや、乗ったときの独特の浮遊感など、昔と変わらない姿や感覚に懐かしい気持ちが蘇ります。ところで、意外に思われる方もいらっしゃると思いますが、ロープウェイは鉄道の一種で正式には「普通索道(ふつうさくどう)」といいます。山の景勝地などに設けられていますが、いま、のんびりと景色を楽しむ旅をしたい人や一部の鉄道マニアに注目されているそうです。
稲佐山に架かるロープウェイは、ふもと近くに設けられた「淵神社駅(ふちじんじゃえき)」から、山頂の「稲佐岳駅(いなさだけえき)」までの約1100メートルを5分でります。山頂の展望台は一部がこの春に整備され、屋上の展望広場には新しく椅子が設置されたり、夜には足下をLEDの光が照らすなど、以前より快適に景色を楽しめるようになっていました。
360°を見渡す展望台からは、長崎港の南西沖にこの春開通したばかりの「伊王島大橋」の姿が確認できました。ちなみに眼下の眺望をきれいに撮影したいなら、午後がおすめです。稲佐山側に傾いていく太陽が市街地を照らしてよりクリアに写すことができます。
また、多くの人が気付かずに通り過ぎていくのですが、展望台の近くには国が定めた「三角点」が設置されています。三角点とは、地球上の位置(経緯度など)や海面かの高さが正確に測定されたところで、山の頂や見晴らしのいい場所に設けられています。地図の作成や道路建設などの際に必要不可欠で、全国に約10万カ所も設置されているそうです。稲佐山の三角点の説明板には、三角点標石の上面が東京タワーと同じ333メートルの高さにあたると書いてありました。
稲佐山から見渡す長崎の中心市街地は東側に位置し、まちは北に向かって伸びています。その景色の遥か先には東北地方があるのです。かつて観光で訪れ、この景色をめた被災者の方々もいらっしゃるに違いありません。皆様の健康と一日も早い復興を祈っています。