第375号【長崎からエールをおくります】
日に日に春めく長崎のまち。1週間ほど前に開花した桜は、満開のときを迎えようとしています。東北地方へ桜前線がたどり着くのは、1カ月ほど先になるのでしょうか。ご近所の庭では、1本のミモザの木が花を咲かせました。ミモザは早春の季語。フランスでも春を告げる花として知られています。とても小さくて丸い黄色い花々が、細い枝いっぱいに鮮やかに咲く姿は、見上げるたびに元気をくれます。
東日本大震災で被害を受けられた方々へ。寸断されていたルートが開かれ、ようやく救援物資が届きはじめていると聞いています。全国各地から、もちろん長崎からも医療チームや救援物資が被災地へ次々に向かっています。そして、直接出向くことはできないけれど、多くの人々が被災地の方々に思いを馳せ、力になりたいと願っています。
いまだ全貌が見えない巨大地震の被害。テレビで繰り返し流される息を飲むような災害の場面。大津波から一夜明けた惨状を見て、65年前、原爆で破壊された長崎の光景を思い出したという人もいました。長崎はこれまで、原爆、そして長崎大水害、雲仙普賢岳の噴火災害など、数々の大災害を経験しています。そこから培ってきた放射線医療のノウハウやネットワーク、そして、災害復興のための知恵や知識は、今回の巨大地震の復興にきっと活かされ、役に立つと信じたい。
原爆投下から数ヶ月後。荒廃した原子野の中に1本の花が咲きました。それは、スクッと高く伸びた茎の先に、薄紫の花びらをつけた「木立ダリア」。奇跡のように咲いたこの花に、当時の被災者たちは励まされ、勇気づけられたという話がいまも語り継がれています。これから、少しずつ温かくなっていけば、あちらこちらで春の花や植物たちが顔を出し、被災者の方々の心を少しでも和ませてくれるはず。
長崎でふきのとうが摘み頃を迎えたのは、2月下旬のこと。北国ではいま時分でしょうか。眼鏡橋が架かる中島川沿いを歩けば、桃の花が満開。川沿いの柳は、萌黄色の新芽をいっぱいつけた枝を垂らしています。コブシ、サンシュユ、モクレン、タンポポ、ユキヤナギ、パンジー、菜の花と、あらためて見回せば、いつの間にか春の花がいっぱい。じきに関東、東北でも咲き始めるはずです。
九州方面の方言で、「おもやい」という言葉があります。相手のことをおもいやって「共有する」、「一緒に仲良く使う」といった意味で使われます。(ちなみに「おもやいの心」は、弊社のモットーのひとつでもあります)。被災者の方々が協力し合い、必死で困難を乗り越えようとする姿に、この言葉の意味をあらためてかみしめました。全国からおもやいの心が集まれば、被災者の方々の心を支えられるはず。長崎から「おもやい」の心でエールをおくり続けます。