第367号【ことはじめ:キャベツとパセリ】

 冬キャベツが出回りはじめました。長崎県では西彼杵半島の北部に位置する西海市などが主な生産地として知られています。やわらかな春キャベツに比べ、しっかりとした固めの葉が特長で、煮崩れしにくくコトコト煮込むロールキャベツにぴったりです。また、冬場のちゃんぽんも、そのシャキシャキとした歯応えでいっそうおいしさを引き立ててくれます。




 ヨーロッパを原産とするキャベツは、17世紀の後半にオランダ船によって長崎に運び込まれたのが最初といわれています。当初は、葉牡丹、つまり観賞用として栽培されたようで、食用としての栽培がはじまったのは幕末から明治初期の頃だそうです。




 キャベツには風邪の予防にもなるビタミンC、骨を強くするビタミンK、胃潰瘍の予防になるというビタミンUなどが含まれた身体にうれしい野菜です。トンカツにはキャベツをせん切りしたものが欠かせませんが、キャベツには消化・吸収を助け、消化不良によるむかつきも防ぐミネラルが含まれているので、理にかなった組み合わせだったのです。




 さて、オランダ渡りの野菜といえば、パセリも然り。別名オランダゼリとも呼ばれているように、こちらも17世紀頃、オランダ船によって運ばれてきたそうです。ちなみに現在、出回っているパセリには、葉がこまかく縮れているタイプ(ちりめん種)と縮れのないタイプ(平葉種)がありますが、一般に私たちがパセリと呼んでいるのは、ちりめん種の方で、平葉種の方はイタリアンパセリと呼んでいます。




 独特の香りと苦みが個性的なパセリ。その香りと小さな森のようなきれいな緑色から、メイン料理に添えられたり、スープにあしらわれたりするなど、主役を引き立てる役割が多いようです。カレーやサラダに添えられたりすると、つい残してしまう人も多いようですが、これは、食材を大切にするという意味はもちろん、優れた栄養価を摂りそびれているという点でも、本当にもったいないことなのです。


 パセリにはビタミンCをはじめ、カロテン、ビタミンB1、ビタミンB2など健康づくりに欠かせない栄養素がたっぷり含まれています。鉄分も豊富で、貧血気味の人にはおすすめです。また、独特の香りのもとになっているピネン、アピオールという成分には、食欲増進や疲労回復、保温効果もあるという、良いことづくめの野菜なのです。


 油との相性がいいパセリ。天ぷらでいただくのが好きという方も多いのではないでしょうか。小学生のお子さんを持つ友人が、「生のままでは苦手でも、甘い衣をつける長崎独特の天ぷらだと、子供たちはよく食べてくれるのよ」と言っていました。




 この冬も、遠い昔に海を渡ってきた長崎ゆかりの野菜たちをたっぷり食べて、健康に過ごしたいものです。



◎参考にした本/カラー百科「野菜と豆」(主婦の友社)、

                からだによく効く食べ物事典(三浦理代監修/池田書店)

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