第363号【平成22年・長崎くんちの踊り町】

 朝夕、涼しくなってきました。今年は特に秋の訪れが待ち遠しかったですね。これからは、祭りなどいろいろな催しのシーズンです。長崎では、来月7、8、9日に、諏訪神社の大祭「長崎くんち」が行われます。今年の踊り町は、馬町、築町、東濱町、八坂町、銅座町と、特別参加の籠町の計6カ町。9月に入り、仕上げの段階を迎えた各踊り町の練習を見学してきました。


 馬町が奉納するのは「本踊り」です。夕刻、八坂神社へ行くと、花柳流の師匠のもと、若い女性たちが真剣な表情で稽古に励んでいました。本番さながらのあでやかな踊りは見応えたっぷり。途中から、町内の子どもたちも登場して、ほほえましい踊りを披露しました。ところで、馬町は諏訪神社の参道の入り口付近に位置し、その町名は長崎奉行所御用の馬を用意したことに由来するとか。それで、傘ぼこのダシには、馬具一式を飾り付けているそうです。


 長崎で初期の頃に開かれた「内町」に属していた築町は、「御座船(ござぶね)」を奉納します。江戸時代、長崎港の警備にあたっていた肥後・細川藩の警備船を模した船だそうで、その豪華さは見どころのひとつです。20数名の根曵き衆が、重さ4トンもあるこの船を、息を合わせて引き回す姿は感動的。また、藤間流の師匠により伝えられた優雅な舞も素敵です。




 長崎浜市アーケード界隈に位置する東濱町が奉納するのは、「竜宮船」です。練習時は、竜の部分は布で覆われ、見ることができませんでしたが、「竜宮船」は、優雅なふくらみを持つ紅白の胴体が特長です。この船のデザインは、長崎市出身の漫画家、故清水崑氏によるもの。重厚で品格があります。傘ぼこには、この町がかつて浜辺だった土地柄にちなんで、大きな蛤があしらわれています。




 八坂町は、「川船」を奉納します。船体が小ぶりな分、川船を引き回す際のスピード感には圧倒されます。勢いよく回転するなかで、へさきにいる男性が宙を舞う姿を見たときは、もうハラハラドキドキ。本番でのどよめきや歓声が聞こえてきそうでした。また、「川船」は網を打つかわいい船頭さんの姿も見どころです。




 町名は江戸時代、銅を製造していたことに由来する銅座町。奉納するのは「南蛮船」です。この演し物は、当時製造した銅を海外へ運んだのが、南蛮船(ポルトガル船)だったことに因んでいるそうです。朱塗りの南蛮船は、とても華やかです。根引き衆が「フォルサ」というかけ声とともに、船を前進させる姿が、とても勇ましくてかっこいいのです。ちなみに「フォルサ!」とは、ポルトガル語で、「がんばる」を意味するとか。もしかしたら、私たちが無意識に使う「ホイサ!」の語源なのかもしれないなあと思いました。




 今年は、特別参加として籠町が「龍踊り」を奉納します。江戸時代、籠町のとなりにあった唐人屋敷の中国人から演技を習ったことにはじまる、本流の龍踊りです。どこかジャズのようでもあるラッパやドラの音色とともに、今年のくんちを盛り上げてくれるに違いありません。




 本番を前に、10月3日(日)の踊り町の「庭見せ」も、相当賑わいそうです。築町の「理容たていし」では、お店を臨時休業して、店内いっぱいにご主人が作ったくんちのミニチュアを飾り、披露するそうです。どうぞ、お楽しみに。



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