第351号【見どころ盛りだくさんの長崎公園】

 大陸から飛来する黄砂は、九州の春の風物詩。長崎では先週、今年初めての黄砂が観測されました。2日後の3月18日には、平年より1週間も早くサクラが開花。いよいよ本格的に春めいてまいりました。


 暖かくなると散歩に出かけたくなります。ということで、緑の多い諏訪神社界隈をぶらぶらと散策してきました。諏訪神社の長坂(ながさか)と呼ばれる参道の石段を登って振り返ると、黄砂の影響で少しかすんだ長崎の街が眼下に広がります。参道横では、約360年前の諏訪神社創建当時の絵図にも描かれているクスノキが、元気に若葉を茂らせていました。このクスノキは、薬の神さまである少彦名命(すくなひこなのみこと)が祀られています。「病魔退散大楠」として、昔から参拝する人が多いそうです。




 参拝のため本殿へあがると、白い花がこぼれるように咲いた樹木が目を引きました。参拝客のひとりが、花の匂いをかぎながら「卯の花だわ」とうれしそう。初夏の花として知られる「卯の花」ですが、諏訪神社のそれは、ちょっと早めに咲く種類なのかもしれません。




 諏訪神社から地続きの長崎公園へ移動。長崎公園は、明治6年に制定された長崎でもっとも古い公園です。大きなコイがたくさん泳ぐ池があり、その中央に日本で初めてという噴水(復元)が設けられています。すぐ目の前では、おいしいぼた餅で知られる「月見茶屋」が、いつものように営業していました。


 長崎公園内の階段を上っていくと、木立の中にひっそりと佇むように、東照宮があります。徳川家康公をはじめ歴代の徳川の将軍を祀ったこのお宮は、正保2年(1645)に安禅寺として創建されました。江戸時代は、幕府の発展を繁栄するかのように周囲に次々と建物が造られたそうです。「当時は、たくさん人々が往来し、賑わったようですよ」と近所の方が教えてくれました。




 安禅寺が東照宮と改められたのは、明治元年のこと。周囲には、古びた敷石や、いまでは立ち入ることもできない参道の石段がありました。当時の繁栄の面影はありませんが、参道の石段をまっすぐ下れば、長崎奉行所へ通じるのがわかり、幕府とのつながりがうかがえます。かつての参道途中には、葵の御紋を施した安禅寺の石門(1819建立)が残されていました。






 公園内から長崎県立長崎図書館や長崎歴史文化博物館方面へ出る小道の途中には、「えっ!?」と驚くようなユニークな形をした木があります。太り気味の人の体型にも似た、トックリノキです。長崎市指定の天然記念物でもあるこの木は、オーストラリア原産の高木で、昭和初期、上海から長崎へ運ばれたもの。日本に持ち込まれたトックリノキの中で、もっとも古い樹木だそうです。




 あらゆるジャンルの見どころが、まだまだたくさんある長崎公園。春の散策にもってこいのスポットです。

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