第342号【シーズン到来!九十九島かき】

 佐世保の九十九島へ行ってきました。お目当ては、いよいよシーズンを迎えた「かき」。そう、九十九島は、長崎でも有数のかきの産地。北海道、宮城、広島など、全国的なブランドに引けを取らないおいしさで、いま食通たちの注目を浴びています。


 九十九島は、長崎県の西北部に位置する西海国立公園の一部で、風光明媚な観光地として知られています。展望スポットのひとつ「展海峰(てんかいほう)」から眺めると、全部で200余りはあるという小さな緑の島々が、青い海にポコポコと浮かび、まるで神話の世界のようです。




 「九十九島かきがおいしいのは、やはり、この美しい自然のおかげです。この辺りの海域は、緑の島々から養分が海水に流れ込み、エサとなる植物性プランクトンが豊富なんです」と話すのは、「マルモ水産」社長の末竹邦彦さん。「マルモ水産」のかきは、ここ数年、東京・品川のオイスターバーのメニューに並ぶなど全国でも屈指のかきブランドとして急成長しています。




 少し小ぶりな殻の中いっぱいに育った乳白色の身。つややかで弾力があり、口にすると海水のしょっぱさのあとに、かき独特の旨味がたっぷりとこぼれ出て、思わず「ああ~、しあわせ」とためいきが出るほどです。「マルモ水産」のかきは、濃厚な旨味とえぐみのないジューシーな味わいが特長。そこには、消費者のおいしいという笑顔を見るために、チャレンジを続ける末竹さんの熱い思いがありました。




 末竹さんが、かき養殖に取り組みはじめたのは5年ほど前のこと。「おじいさんの代から細々と営んではいましたが、本格的にはじめたのは自分の代からです」。後を継ぐ前は、真珠の養殖の仕事に携わっていました。「真珠の養殖技術は、かきの50年先を行くほど進んでいます」。その経験とノウハウを活かし、他が真似できない技術やアイデアを取り入れ、安全でおいしいかきの生産を実現したのです。




 たとえば、成育中にマイクロバブルをあて、殻の開閉回数を増やして、貝柱の筋力を鍛える。そうすることで、貝柱は太く甘くなるといいます。安全性を高めるために、いったん水揚げしたかきをUV殺菌を施した安全な海水の中に入れ、体内の海水を入れ替えます。さらに出荷前に、超音波で余分なものを落とすという念の入れようです。また、ウイルスの検査も週に1度、専門機関を通して行うなど、とことん安全性の確保に努めています。




 美しい九十九島の海を舞台に、完璧ともいえる養殖方法を実践する末竹さん。夢は、「海外の人にも九十九島かきを味わってもらうこと」。すでにこの秋、中国にも出荷し、確かな手応えを感じているそうです。ところで、末竹さんのお話はときに学術的で、まるで生物学者のようでもあります。聞けば、海洋や水産関係の学者などで構成される「世界かき学会」の会員で、そのシンポジウムなどを通していろいろ勉強をしているそうです。日々変わる自然を相手に、かき養殖を極めようとする生産者の真摯な姿が、そこにありました。














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