第339号【もうすぐ、秋の大祭・長崎くんち】
澄んだ青空に広がる、いわし雲。日ごとに秋めく中、長崎市民が楽しみにしているのが、諏訪神社の秋の大祭「長崎くんち」(国指定重要無形民俗文化財)です。今年も370余年の歴史をつないで、10月7、8、9の3日間、まちを挙げて開催されます。
「長崎くんち」の主役ともいえるのが奉納踊りを披露する「踊町(おどりちょう)」のみなさんです。7年に1回その役割が巡ってきます。今年の「踊町」は、上町(うわまち)、油屋町(あぶらやまち)、元船町(もとふなまち)、今籠町(いまかごまち)、鍛冶屋町(かじやまち)、筑後町(ちくごまち)の6カ町です。
9月中旬、いよいよ総仕上げのときを迎えたそれぞれの踊町のけいこを見に行ってきました。どこも本番さながらの熱気と迫力でいっぱい。その様子とともに、各踊町のだしものをご紹介します。
上町は、「紅葉花諏訪祭伊達競(もみじばなすわのまつりのだてくらべ)」という長唄とともに長崎検番の芸子さんたちがプロの舞いを披露。踊りのことはよくわかりませんが、思わず見入ってしまう不思議な魅力がありました。
油屋町は、川船を披露。屈強な根曳衆(ねびきしゅう)たちが豪快に川船を曳き回す姿は感動的です。油屋町は江戸時代、長崎で唯一油を販売した町で、今回、町の象徴ともいえる傘ぼこの垂幕は、その昔、油問屋の主人だった大浦お慶という人が寄進したものを復元したそうです。大浦お慶は長崎に集まった幕末の志士らを支援し、坂本龍馬とも親交があったといわれている人物です。
元船町は、唐人船をダイナミックに曳き回します。せまい踊り場で、船を回転させながら前進させる技が見事です。唐人船に乗り込んで中国の楽器を力いっぱい鳴らす子供たちの姿も見逃せません。また月琴や胡琴などを使った明清楽の演奏と踊りも盛り込まれ、異国情緒たっぷりのだしものが楽しめます。
今年の踊町の中で、もっとも注目を浴びているのは今籠町かもしれません。57年ぶりに本踊りを奉納。花柳のお師匠さんによる指導で、「秋祭賑諏訪乃獅子舞(あきまつりにぎわうすわのししまい)」を披露します。また、傘ぼこは実に78年ぶりの奉納だといいます。今籠町の熱心な練習風景から、奇をてらわない、古き良きくんちを彷佛させる味わい深さが感じられました。
鍛冶屋町は、宝船を披露します。正絹の帆布にサンゴなどを飾った宝船は、見るだけでも金運が上がりそうな華やかさと美しさで魅了してくれることでしょう。宝船を力強く曳き回す根曳衆のカッコ良さといったらありません。恵比須天、大黒天など七福神が登場する踊りも楽しみです。
筑後町は、龍踊です。3体の龍(青龍2体、白龍1体)が登場します。ドラや太鼓など中国の楽器で奏でる龍囃子に合わせ、3体の龍が一斉に踊る様子は鳥肌が立つほどドキドキします。どこかジャスを思わせる長ラッパの音色は、龍の鳴き声を表しているとか。秋の空に響き渡る龍の声。ぜひ、聞きに来てください。
◎参考にした本/長崎事典~風俗文化編~(長崎文献社)