第337号【夏の身体にうれしい冬瓜】

 暑い日が続いています。いかがお過ごしですか?先日、ご近所の方から「暑気払いに、どうぞ」と手作りのお惣菜をいただきました。干し大根、フキ、ミョウガを甘酢に漬け、さらに赤シソと梅酢を加えてあえたもので、口にすると、暑さでボーっとした気分が吹き飛ぶほどの酸っぱさ!噛むと、干し大根の甘味とフキの風味、そしてミョウガのさわやかな食感と香りが楽しめ、まさに、夏にうれしいおいしさなのでした。




 ご近所さんは、長崎県北部に位置する生月島(いきつきじま)のご出身。島を離れたいまも夏になると作る故郷の味だそうで、「フキが入っているのが特長かな」とおっしゃっていました。その地域ではこの時期、旬の野菜などを売っている無人販売所などにも置かれていたりするそうです。


 夏のメニューといえば、長崎の家庭で食べ伝えられてきた料理のひとつに冬瓜(トウガン)のスープがあります。冬瓜と鶏肉を煮込んだおつゆで、お盆が終わった16日に食べる精進落ちの一品として知られています。また、夏の卓袱料理にも大鉢で登場することがあります。




 冬瓜は東南アジア原産のウリ科の植物。一説には古代、仁徳天皇の時代に朝鮮半島から伝えられたといわれています。長崎では「トウガ」とも呼ばれ、カボチャやスイカ、マクワウリ、シロウリといったウリ科の野菜たちといっしょにこの時期、店頭に並びます。温帯から熱帯地域に育つ冬瓜は、同じ日本でも寒い地方ではあまり馴染みがないかもしれません。余談ですが、収穫した冬瓜はその名にふさわしく、風通しのいい冷暗所に置けば冬まで持つそうです。




 水分をたっぷり含んだ白くてやわらかな果肉。淡白でクセのない味と香り。冬瓜は、あっさりとしたものが欲しい夏にはぴったりの食材です。ビタミンCを含んでいるので風邪のときにいいそうで、さらに利尿効果にもすぐれ、むくみや暑気あたりのほか、肥満を防ぐ効果もあるといいます。旬のものは身体にいいとはよく聞きますが、まさにそんな食材のひとつなのです。


 冬瓜のスープの作り方は、皮をむき種を除いた冬瓜、鶏肉、きくらげを1~3センチくらいの角切りにし、水から煮込んでいきます。冬瓜がやわらかくなったら、薄口しょうゆ、酒、塩、こしょうで味をつけて出来上がり。器に盛り、小ネギを散らしていただきます。




 あっさりとしたスープと煮込んでやわらかくなった冬瓜は、冷やしてもおいしく、夏場に最適です。中華だしやコンソメを加えたり、具材を鶏肉から、豚肉やエビに変えてみたり、仕上げに片栗粉でとろみをつけるなど、それぞれの家庭の好みに応じたアレンジができます。夏バテで食欲減退気味という方は、お試しになってみませんか?





◎参考にした本/野菜と豆カラー百科(主婦の友社)、からだによく効く食べもの事典(三浦理代/池田書店)

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