第336号【飼育ペンギン、海へ出る!(長崎ペンギン水族館)】
どこか幼児を思わせる体形とかわいい歩き方、そしてタキシードに身を包んだかのような容姿で、多くの人々に愛されているペンギン。空を飛べない海鳥として知られていますが、水中では飛ぶような勢いで巧みに泳ぎ回ります。そんなペンギンのさまざな姿を間近で観察できるのが「長崎ペンギン水族館」です。
長崎駅から車で約20分。目の前に美しい橘湾が広がる海辺に建つ「長崎ペンギン水族館」は、前身である「旧長崎水族館」時代から、ペンギンの繁殖や飼育の技術の高さでは日本屈指の水族館として知られています。けして大きな水族館ではありませんが、アットホームな雰囲気が魅力で、ペンギンをはじめさまざまな魚介類の世界を楽しく観察することができます。
「長崎ペンギン水族館」でこの夏、大きな話題になっているのが、フンボルトペンギンが海に出て泳ぐ様子を観察できる『ふれあいペンギンビーチ』です。7月にオープンしたばかりのビーチで、飼育されたペンギンが、自然の海に出て泳ぐのは世界で初めての試みということもあり、注目を浴びています。
フンボルトペンギンは、体長60センチほどの温帯ペンギン(生息地は南米ペルーあたり)です。性格は温厚で、他の種類のペンギンほど警戒心は強くないそうです。それでも、生まれも育ちの水族館の「箱入りペンギン」ということで、飼育員さんたちは、春頃からペンギンたちが海に慣れるための訓練をはじめたそうです。またペンギンがケガをしないように、岩場についた貝を除いたり、クラゲ対策の網をはったりなど、安全対策に余念がありません。
夏休み期間中は毎日ビーチに出ているフンボルトペンギン(午前から午後にかけての数時間。天候によって変更あり)。訪れたこの日、ビーチに出たのは10羽ほど。飼育員の方々に見守られながら、小さな歩幅で海へと急ぐ姿のかわいらしさといったらありません。ペンギンたちを驚かせないように静かに観ていた人たちは、みんな顔がほころんでいました。
海を目の前にするやいなや一目散に海中へ入っていくペンギンたち。ダイバーのようにスイスイともぐっていく姿は、館内の水槽で見る姿とは違ってとても野生的です。海に浮かぶ様子は、まさに海鳥のようで、ときどき白いお腹をみせるところはラッコのようなユニークさがあります。干潮の時間帯だったため、網で仕切った遊泳範囲がせまかったのですが、海でのひとときをのびのびと楽しんでいる様子です。暑さもあってか、エサの時間になってもなかなか砂浜に上がってこないものもいました。
地球上には、全部で18種類のペンギンがいるそうで、ここ「長崎ペンギン水族館」には、そのうち8種類が大切に飼育されています。館内の水深4メートルの大きな水槽には、キングペンギン、イワトビペンギンなど4種類の亜南極ペンギンがいて、海中をダイナミックに泳ぐ姿を見ることができます。
水族館で大切に飼育されるペンギンたちの姿は、かわいいばかりでなく、人と動物とのしあわせな関係や、自然の豊かさ、不思議さなど、いろいろなことを考える機会を与えてくれます。子供たちはもちろん、多くの大人にも訪れてほしいと思いました。
※「ふれあいペンギンビーチ」は諸事情により予告なく中止となる場合がございます。事前に開催状況をご確認いただくことをおすすめいたします。
◎ 取材協力/長崎ペンギン水族館(長崎市宿町3-16)