第331号【中島川の生物~サギ~】

 眼鏡橋をはじめとする石橋群で知られる中島川。長崎市民にも観光客にも親しまれているこの川には、いろいろな生物が生息しています。散歩がてらの観察で見かける魚類、鳥類、昆虫類は、名前がわからないものまで含めると、数え切れないほど。その中から今回は、川沿いを通るたびについつい姿を探してしまう、サギ(鷺)をご紹介します。




 中島川でいつも見かけるサギは、大きい順からアオサギ(青鷺)、コサギ(小鷺)、ゴイサギ(五位鷺)の3匹(種)です。袋橋(眼鏡橋のひとつ下流にかかる石橋)から上流に向って9つめにかかる桃谷橋までの間(徒歩約10分の距離)のどこかにいて、それぞれ単独で行動しています。


 サギは、広く世界に分布し(特に熱帯~亜熱帯)、種類も100を超えるとか。そのうち日本には10数種類いるようです。田んぼや沼地、川、海岸などに生息し、魚やカエル、昆虫などをとって食べます。中島川にいる3匹は、本州、四国、九州ではほぼ一年中見られるメジャーなタイプのようです。

 

 俳句では、サギは夏の季語です。季語集には、シロサギ(白鷺/白いサギの総称)をはじめ、アオサギ、ヨシゴイ(葭五位)、ササゴイ(笹五位)、ミゾゴイ(溝五位)など仲間の名がありました。シロサギ、アオサギは日本で一年中見かけますが、それ以外は夏に南方から渡来してきます。いずれも夏が繁殖期なことから、季語になっているそうです。


 「夕風や水青鷺の臑(すね)をうつ」は蕪村の句。中島川で見かけるたびに、美しいなあと思うのはこの句にも詠まれたアオサギです。70cmくらいの大きさで、長い頸(くび)の下には、青というより、灰色っぽい羽根が付いています。大きくなると90cmを超えるという日本最大のサギで、ツルと間違える人もいるとか。羽を広げるとさすがに大きく、石橋の上をさっそうと飛んで行く姿は迫力があります。




 眼鏡橋そばのハートストーンがはめ込まれた護岸あたりでよく見かけるのが、コサギです。その名の通り小さなサギで、足の指が黄色いのが特長です。飛び石の上でじっと魚をねらっているかと思うと、周囲を歩き回ってみたり、他の2匹と比べると落ち着きがないタイプです。繁殖期にだけ生えるという白い2本の冠羽(かんう/後頭部の長い羽毛)がチャーミングです。






 桃谷橋の近くでよく見かけるのが、ゴイサギです。背は濃紺、羽根はグレー、胸からお腹あたりは白。首は短くずんぐりとして、小型のペンギンのようなかわいらしさがあります。石の上にチョコンと乗り、ひたすらエサが近付くのを待ちます。しかし、このゴイサギは基本的には夜行性で、昼間は水辺の木で眠っていると、図鑑にはありました。日中見かける中島川のゴイサギは、エサを待つふりをしながら、昼寝をしているのかもしれません。泣き声はコァッ、コァッ。めったに聞くことはありません。






 人間にこびない野生を残しながら街の中の環境に順応し、たくましく生きている中島川のサギ。あなたのお住まいの地域にもこんなサギ、いませんか?



◎ 参考にした本/日本動物大百科~鳥類?(平凡社)、日本大歳時記(講談社)、バードウオッチング入門図鑑~はじめに覚える33種~(河出書房新社)

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