第314号【懐かしのサツマイモ料理】

 朝晩がだんだん涼しくなってきました。9月初め、高原の避暑地として知られる島原半島の雲仙で、なんと例年より2ヶ月半早く紅葉がはじまったというニュースが流れました。一方、長崎の市街地は、日中の残暑はまだまだ続いています。しかし、時折吹いてくる冷んやりとした風に、秋めく気配がいつもより早い感じがしないでもありません。とにかく、行楽の秋、収穫の秋が待ち遠しい今日この頃です。


 気候が過ごしやすくなると、気分も体調も良くなり食欲が出てきますね。そこで今回は、食物繊維が豊富なヘルシー野菜のひとつ、サツマイモにスポットをあて、昔懐かしい料理をご紹介したいと思います。




 荒れ地にも育つ強さのあるサンツマイモ。飢饉を何度も経験した江戸幕府は作付けを奨励。さらに戦後には、食料不足のピンチを救ったことでも知られています。周囲のお年寄りに子供の頃の食事について聞くと、蒸かした「イモ」や「イモ飯」ばかりを食べていたという方が多いようです。当時の「イモ飯」は、イモの占める割合いが多く、アワや米をわずかばかり足して炊いていたそうです。


 サツマイモのことを「トイモ(唐芋)」と呼んでいた島原半島あたりでは、「イモ飯」は、「トイモ飯」と呼ばれていました。乱切りにしたサツマイモとアワを一緒に炊くのが基本で、これにお米(または麦)を加え、三種類を混ぜて炊くと「三品飯(さんちんめし)」と呼び名が変わりました。「三品飯」は、農作業が一区切りした時、麦やイモが新しく収穫された時など、暮らしの節目に炊いて食べていたそうです。


 さっそく、サツマイモとアワとお米を使って、「三品飯」を作ってみました。お米(2合)とアワ(お米の量の30%くらい)をそれぞれ洗い、サツマイモ(中1本)を一口大に切って、炊飯器へ。水(約3カップ)を入れ、塩小さじ1、酒大さじ1~2を入れて炊き上げます。




 炊きあがった「三品飯」は、アワがモチモチ、サツマイモがホクホクっとしておいしい。彩りも秋らしいご飯です。農作業の一区切りとして食べていた当時の人々に思いを馳せれば、お米ひと粒たりとも残しちゃいけないと、あらためて思いながらいただきました。




 サツマイモを使った素朴なお菓子「イモ寄せ」もご紹介します。311号でもご紹介した野母半島に伝わるお菓子です。蒸したサツマイモをつぶし、小麦粉、砂糖、ショウガ汁、白ゴマを混ぜてこねたものを、さらに蒸したもので、素朴なイモ羊羹のような味わいです。祝い事や法事など人が集う時に作っていたそうです。「イモ寄せ」は2タイプあって、最後に蒸さずに、こねた材料をフライパンでホットケーキのように焼くパターンもあります。また、よりおいしくするために、白玉粉や卵を加える作り方もあるようです。






 サツマイモの日本への伝来については当コラムの208号、また、サツマイモを使った他の郷土食を246号でもご紹介しています。合わせてお楽しみください。


◎参考にした本/日本の食生活全集42~聞き書・長崎の食事~(農山漁村文化協会)


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